脳卒中における肩関節亜脱臼

2021.12.01

こんにちは。鍼灸師の矢澤です。

脳卒中後遺症の中でも多くみられるのが麻痺側の肩関節痛です。

片麻痺患者の55%が肩関節痛を生じているといわれています。その中でも35%の方に肩関節の亜脱臼が認められています。肩甲骨と上腕骨がついた部分を肩甲上腕関節と言います。正常であれば触診した際にかすかな隙間を感じる位ですが、肩関節亜脱臼の方はこの部分に明らかな隙間を感じることができます。

脳卒中肩関節亜脱臼の原因

①上腕骨頭を肩甲骨関節窩に押さえつけている筋肉群の麻痺

主にローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)、三角筋など

に棘上筋麻痺が影響している。

②上腕骨を支えている関節包や靭帯の弛緩性伸長

上関節上腕靭帯、中関節上腕靭帯、下上腕関節靭帯、上腕二頭筋腱長頭

③肩甲骨の下方回旋による上腕骨の下垂 (これはごく少数派)

大胸筋、広背筋、菱形筋などの短縮

特に弛緩性麻痺の方で多く、肩甲上腕関節を支えている筋肉が、麻痺により働いていないためにおこる。

慢性化する原因

最初のころは棘上筋を中心とした肩関節周囲筋の麻痺により上肢の重量に耐えられず生じる。その後関節包や靭帯が伸長されてしまう。この流れが固定されてしまうと、その後、筋活動が認められるようになってきても不可逆的な状態となる。三角巾等を利用して腕を釣った状態で生活されている方は、短期的には良いが、長期的にみると亜脱臼の回復を遅らせることが示唆されている。痛みや筋収縮など軽減できることは早めに行い、少しずつ外していき重力負荷をかけていくほうが良いとされています。

亜脱臼の対処方法(脳卒中リハを中心に)

①麻痺側における不動筋へのアプローチ

・FES(機能的電気刺激 Functional Electrical Stimulation)

専用の電気機器を使用し、末梢神経を直接刺激することで、麻痺がある筋肉を動かし機能を代償させ、さらに動きを作り出すこと。当施設で行う川平法の手技の中で、電気を流して神経筋を促通させた状態で、手足の運動を行います。これもFESの一つになります。

②肩関節周囲筋の活性化

肩甲骨と上腕骨をつないでいる筋肉を活性化させて、関節内にとどめさせておくようにします。肩関節は球関節で可動性が高い分、細かな筋肉がいくつも付いています。そういった筋肉は特に麻痺をされている方は意識的に動かすことが非常に難しくなっています。また、痛みで動かせない方は一人での練習が困難です。意識して効率的に細かい筋肉を動かす練習をしていきます。

③姿勢改善

肩関節亜脱臼になっている大半の方は、痛みや筋肉の麻痺が原因となり、左右非対称の姿勢になっています。各体のパーツが本来の位置にないことで筋肉の動きが制限されてしまい、それが痛みや亜脱臼を助長させている可能性があります。亜脱臼群の40%の方に頚部側弯が認められると言われています。通常麻痺の方に比べてもはるかに大きい数値となっているので、姿勢が大きく関係していると思われます。

リハビリでは正しい姿勢を意識させた運動や、狙っている筋肉が動きやすい姿勢で運動を行っていきます。

④鍼、マッサージによる機能回復

鍼治療や、マッサージによって肩峰‐上腕骨頭の距離が縮まることがわかっています。神経筋肉の促通や血流改善が有効な場合があります。また、鍼通電により、低周波の電気を流すことによって、痛みの改善も期待できます。

終わりに

最後に、今回は脳卒中における肩関節亜脱臼の説明と当施設での治療法の一部を説明しました。

後遺症で肩の痛みを訴える方は多く存在します。痛みや可動域制限によるROMの低下は生活の質を下げることになってしまいます。肩手症候群といわれる、痛みに対して過敏になってしまう状態を合併する方もいられます。なかなか治らない方は、あきらめず一度専門的なところ、またはセカンドオピニオンで違う場所で診察を受けることをお勧めします。