睡眠と不眠

2022.03.12

こんにちは。鍼灸師の矢澤です。

睡眠とは寝る事を意味していますが、生物学的には寝る意味は明らかになっていません。脳のない生物には睡眠が存在していないため「脳が脳の機能を休ませている状態」と考えられています。

睡眠を生理学的に説明するとレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。脳波、眼電図などの波形の特徴のようなところは割愛致します。今回は不眠についてです。基礎疾患のない人で、「あまり眠れない」と感じている方が、どのように気を付ければよいかを、不眠の養生の観点からお伝えします。てはも3号の不眠特集を参考にして、加筆しています。ご了承ください。

人は寝ないとどうなるのか?

これはネットからの引用ですが、アメリカでは1960年代、人は寝なくても活動できるのか?不眠の記録を作ろうとした若者がいました。その記録は264時間!11日!この人がどうなったかというと別に命を落としたわけではありません。その後普通に生活をしています。しかし、開始4日~5日から幻覚などの症状が出るようになり、精神的な不調が起きるようになりました。現在は身体の危険が伴う行為であるのでギネス認定されていませんが、睡眠をとらないことは身体的に精神的に非常に危険であると考えられています。

厚生労働省の健康実態調査によると、日本人の66%の人が睡眠時間7時間未満であることがわかりました。この時間は他の国と比較しても短く、推奨睡眠時間と比較すると1時間短いことになります。また、40%近い人が日中に眠気を感じているとも言われています。これはアメリカでも同じような報告があり、国内外を問わず睡眠に関して何らかの問題を抱えていると言えます。

不眠の養生

ここでとりあげるものは、脳梗塞やうつ病などの基礎的な疾患を伴っていない睡眠不足に対する養生になります。養生とは簡単に言えば健康に気を配る事です。不眠の養生とは、不眠にならないように何らかの手をうっておくという事になります。睡眠は、東洋医学的に後天の気を補充する大事な役目があるので、不眠は全ての症状を悪化させる要因にもなります。また、アトピーや神経痛などの炎症症状も悪化させてしまいます。

①睡眠の質は時間に比例するという嘘

先ほど日本人の睡眠時間について説明しましたが、推奨睡眠時間は8時間と言われています。しかし、

8時間ちゃんと寝ないといけない!!!」と思ってしまっている人は不眠の罠にかかりやすくなっています。個人によって必要な睡眠時間は違います。8時間必要な方もいれば、4時間くらいでもよい方もいます。睡眠のリズムは3時間周期という報告もあるので個人差があります。また、年齢を重ねると必要睡眠時間は短くなります。(寝るにも体力が必要になってくる)ですから、良い睡眠は、時間に比例するものではなく、寝ている間の質の問題になってきます。質を良くする準備が最も大事になります。

②寝なければいけないと考える

寝つきが悪い不眠の人は、寝なきゃいけないというプレッシャーから、目をつむりながら「寝なければいけない」と考えてしまいます。寝ることを考えて頭がいっぱいになって寝れません。認知行動療法ではその場合、逆に「今日は絶対に寝ない」と考えて寝むりについてください。とお伝えします。逆に眠くなって寝てしまう事があります。寝れないと思って、目をつむりながらも一日中起きていたつもりでも、脳波を確認すると睡眠パターンを出している方もいます。次の日は何ともなく行動ができています。

③寝る前のスマホ

寝る時のスマホは良くない。これは考えるだけでご理解できると思います。原因としては、ブルーライトの刺激は短時間でもメラトニンの生成を阻害するからです。ブルーライトカットしていても、光がよくありません。メラトニンは生体リズムを作り出す重要なホルモンで催眠の作用があります。ですから、夜中に時間を確認する際にスマホの明かりをみてしまうだけでも睡眠にとってはよくない刺激となってしまいます。

④カフェイン

コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには覚醒作用があります。エナジードリンクや栄養ドリンクには大量に入っており、ほとんどはカフェインの効果といえるかもしれません。代謝する能力には個人差がありますが、4~5時間は体に溜まっているので、寝る時間を逆算して飲んだ方がいいと思います。

⑤飲酒

アルコールが分解される際に肝臓では炎症が起きます。それがセロトニン(幸せを感じるホルモン)やメラトニンの合成を阻害させます。東洋医学的にも肝の蔵血作用により睡眠中は肝に血が収まり睡眠することができるのですが、アルコールの分解に肝の解毒機能が使用されると、その分最適な睡眠を作る状態が遅れてしまいます。入眠に対しては良いかもしれませんが睡眠の質が低下してしまいますので、起きた時にすっきりした感じはありません。

飲まないと寝むれないという方は、常習的な飲酒の方が問題となってきますので、依存症を含めて体のケアが必要です。

⑥入浴

入眠の際は体の深部体温が下がった時に眠りに入ると言われています。お風呂で深部体温を温めてから、寝る際に下げる体温差を作ることで、すっと眠りつくことができます。ですから、熱いお風呂に短時間入るより、少しぬるめでも10分ぐらい長めに浸かるのが良いとされています。シャワーしか時間のない方であれば、肩甲骨の間を少し熱めの温度のお湯をかけて温めると良いです。

寒い時期は、電気毛布などで布団を温かくしすぎてしまうことは良くありません。また、厚い靴下や手袋をはめて寝てしまったりすると、手足末端の放熱がなくなり、深部体温が下がらない事があり、眠りにくくなってしまいます。

⑦運動不足

適度な運動は快眠には必要です。逆に激しすぎる運動は睡眠を妨げてしまいます。

また、運動を習慣化させる必要があります。特に高齢者では効果を発揮してくれます。眠りたいから一時的に運動をするというのは効果が期待できません。生理学的には脳の温度を一過性にあげることができます。そして睡眠のタイミングで温度が低下することによって良い入眠ができると言われているので、運動するベストの時間は睡眠から3~5時間前になります。運動とは関係ありませんが、表情筋とセロトニンと睡眠は深く関係しています。顔の接触鍼やマッサージで皮膚の粘弾性は上がるため、寝る前のお顔メンテナンスも睡眠には良いかもしれません。

⑧食事

甘いものの過食によって脾胃が負担になり食べ物の停滞が起き、睡眠の妨げとなります。また、夜食をすると睡眠ホルモンであるメラトニンの生成分泌が阻害されてしまうので、睡眠3時間以上前には食事を終了するのが好ましいです。睡眠によい食べ物としては、食物繊維が多い方が良好な睡眠を得られやすくなります。トリプトファンを多く含む、魚介、鶏肉、豆類はセロトニンの生成を促し、睡眠を即し、質を上げることができます。

大豆料理
鶏肉

漢方

一般的に外来で処方される薬は、脳の活動を抑えて眠気を誘う、①バルビツール酸系、②ベンゾジアゼピン系③副作用が比較的少ない非ベンゾジアゼピン系④メラトニン受容体作動薬⑤オレキシン受容体拮抗薬などになります。

長期服用などで副作用が気になる人や、いろいろな薬を併用している方は積極的に漢方を処方します。その中でも代表的なのが「酸棗仁湯サンソウニントウ」です。市販では漢方ナイトミン。体力や気力が消耗して、疲れているのに眠れない方に適していますが、お試しで飲んでみるなら最適な漢方です。