関節液から考えるぽきぽき音の正体とは?

2022.10.08

骨と関節

鍼灸師の矢澤です。徐々に暑さが無くなり、朝昼は涼しく過ごしやすくなってきましたね。

こんな季節の変わり目になると、持病の痛みが悪化するなど体調変化が現れる方がいます。関節痛などもその例です。

今回は、関節について簡単な構造と痛みの仕組み、水(関節液)が貯まるとはどんな状態かお伝えします。最後に関節ぽきぽきについて関節液を踏まえて解説します。最後までお付き合いお願いいたします。

人体模型

人間は206個の骨から骨格を形成しています。骨と骨は合わさって関節になります。骨には筋肉、腱、靭帯が付着し、関節を固定し、脳の指令によって動作を作ります。ちなみに骨の中で一番大きなものは大腿骨です。一番小さいのは耳の中にあるあぶみ骨で、約3ミリ程です。

関節液のための知識:滑膜関節

 一般的に私たちが思いつく6大関節(手関節、肘関節、肩関節、足関節、膝関節、股関節)に加えて、可動性のある関節は滑膜関節です。滑膜関節の特徴としては関節と関節を覆うように関節包があります。図1

図1 関節内

関節包は外面の線維膜と内面の滑膜でできています。この滑膜からは関節液が分泌されます。この関節液は、滑膜と関節軟骨で作られる関節腔の中に満たされています。関節液は、ヒアルロン酸やたんぱく質でできており、粘り気があります。関節液の役割は、関節の動きを滑らかにすることと、関節軟骨に栄養を与えることです。いわゆる、関節に水が貯まるという状態は、この関節液が炎症等によって増えてしまった状態をいいます。後述

滑膜関節には関節の形状から6つに分類されます。(滑走関節、蝶番関節、顆状関節、車軸関節、鞍関節、球関節)それぞれの形状については割愛させていいただきますが、関節の多くは滑膜関節です。

関節液のための知識:関節が痛いとは?

以前膝関節痛について紹介しました。

/2022/02/21/crebral-infarcion-knee-joint-pain/

靭帯損傷などの明らかな原因がない限り、痛みの原因は滑膜の炎症です。関節軟骨が減ると痛みが出ると考えている方も多いと思いますが、関節軟骨自体には血管や神経は通っていません。関節軟骨は痛みを感じません。関節腔をともに形成する滑膜に神経や血管が富んでいるのでそこで痛みを感じます。

骨自体にも痛みを感じるセンサーはありません。骨を覆っている骨膜に痛みセンサーが存在しており、骨折の時に痛みを感じるのはそれが原因です。逆に、骨折具合によってはあまり痛みを感じない時があります。たとえば脊椎の圧迫骨折や足指の骨折などは、痛くても動くことができるので発覚が遅れることがあります。

関節液のための知識:水(関節液)が貯まるとは?

膝などが典型ですが、関節に水が貯まるという状況があります。

膝に水が貯まる

この水の正体は

関節液

です。

関節液は滑膜から生成されており、同時に吸収もされています。

正常な関節の状態では、生成と吸収のバランスが保たれており、関節腔内には適切な量で潤っています。

一方で、滑膜の炎症などで関節液の生成が多くなり、吸収が追い付かなくなると関節液が貯まっていきます。水が貯まると、圧迫による痛みも出現します。さらに、関節液中のサイトカインが痛みを引き起こし、炎症をさらに悪化させる負の循環が生まれます。

水が貯まるのは膝が多いですが、どの滑膜関節でも貯まる可能性はあります。

水(関節液)が貯まると癖になるのか?

私が臨床を始めたころは、水を抜くと癖になるから抜かない方がいいと考える年配の方が多くいました。

注射で水を抜く

結論を言うと、貯まった水は抜いたほうがいいと思っています。なぜ水が貯まってしまったのか原因を考えると、炎症が強いからです。炎症は水を貯めて、痛みを助長させます。よってこの炎症を収めることを第一選択と考えた場合、水を抜いて痛みをとり、関節内の状態をリセットさせる必要があります。正常な関節の状態が一時的にでも出来上がると正常な動きを取り戻すことができるので、炎症が収まってきます。症状の軽減の過程で再び水が貯まることがありますが、その時はまた、抜いたらいいと思います。

抜かない方がよいと考えている人たち、関節腔内に栄養を与えている関節液をむやみに抜いたら、治癒力が落ちるといものがあります。どちらを選択するかは担当の先生の考えによるところがありますので、医療機関で相談ください。

関節の痛みは動いた方がいいのか?安静が良いのか?

明らかな炎症による熱感がある場合は、アイシングと安静が必要になりますが、

基本、安静をとるより、ある程度の運動が必要と考えています。

炎症による痛みを収めるためには関節液が必要です。回復のために滑膜から生成→吸収のサイクルを維持し、常に新鮮な関節液の状態を作ります。この関節液を軟骨細胞までしみ込ませるためには関節の動きが必要になります。

その動きがないと、軟骨細胞に栄養を渡すことができず、関節内が傷んでいきます。関節を健康に保てず回復の遅れ、退行性痛への移行を助長していきます。

関節ぽきぽき

昔の漫画で、喧嘩の前に必ず指をぽきぽき鳴らす描写がありました。世紀末の覇者もやっていましたよね。どこの関節が一番鳴りやすいか探求していた男子もいましたね。あれは何が鳴っているのでしょうか?

これにも関節液が影響しています。

関節を急に動かすことで関節腔内の圧力が下がり、関節液が気泡となり、その際に出る音が「ぽき」だそうです。キャビテーションという物理の法則で説明できるそうです。

何回も連続でできないのは、気泡が関節液に戻るまでに時間がかかるからだそうです。

棚障害などで膝を曲げるたびに音が鳴る人は、別の原因があるのでしょう。

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