
脳卒中(脳梗塞や脳出血)は、日本人の死因第4位、寝たきりになる原因の第1位となっている重大な疾患です。厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態統計」によると、脳血管疾患による死亡者数は年間約10万人にも上り、一命を取り留めても多くの方が後遺症に悩まされています。
特に左脳の損傷によって起こる「右片麻痺(みぎかたまひ)」は、単に身体が動きにくいだけでなく、言葉の障害である失語症(しつごしょう)を伴うことが多いため、患者様やご家族はとても不安ですよね。
本記事では、脳梗塞による右麻痺のリハビリについて、その特徴や日常生活で気をつけること、そして将来の見通しについて詳しく解説していきます。
この記事の要約
・右麻痺の特徴:身体の右側の麻痺に加え、言葉の障害(失語症)や論理的思考の低下が起こりやすい。
・リハビリの注意点:コミュニケーションの工夫と、麻痺した側を無視しないリハビリが重要。
・予後を良くするために:従来の訓練に加え、多方面からのアプローチで脳の自己修復機能(神経可塑性)を最大限に引き出す。
脳梗塞で右麻痺になる原因と左脳が司る役割とは?
まず、脳梗塞によって左脳が障害されているのに、右麻痺が起こるのはなぜでしょうか?
理由は、脳からの神経が途中で左右入れ替わる「交叉(こうさ)」という仕組みがあります。
⒈なぜ「左脳」がやられると「右側」が動かなくなるのか
人間の脳は、右脳が身体の左側を、左脳が身体の右側をコントロールしています。そのため、左側の脳の血管が詰まると、反対側である右半身に麻痺が現れます。
基本的には9割の神経が脳幹の延髄(えんずい)と呼ばれる場所で左右逆に入れ替わります。これを錐体交叉(すいたいこうさ)と言い、障害を受けた脳とは反対側に麻痺の症状が出てくるのです。

⒉左脳(優位半球)の重要な役割
多くの方(特に右利きの方)にとって、左脳は「優位半球」と呼ばれ、言葉を司るセンター(言語中枢)が存在します。そのため、右麻痺の方は「手足が動かない」という症状に加えて、言葉に関するお悩みを抱えるケースが非常に多いのが特徴です。
稀に左利きの方はこの優位半球が反対の右脳になっている場合があり、その際には左麻痺でも優位半球の症状が現れることがあります。
知っておきたい脳梗塞・右麻痺の3つの大きな特徴
右麻痺には、左麻痺とは異なる特有の症状があります。それらを知っておくことで、後述する自宅でも症状に対するリハビリが積極的に行えます。
特徴①:言葉の障害(失語症)
右麻痺の方の多くに「失語症」が見られます。これは喉の筋肉の問題ではなく、脳の言葉のセンサーがダメージを受けた状態です。
- ・言いたい単語が出てこない
- ・相手の言っている意味が理解できない
- ・文字が読めない、書けない
このような症状により、意思疎通が難しくなることがあります。
特徴②:失行(しっこう)
失行とは手足の感覚麻痺や運動麻痺がないのに、頭で理解している動作が思い通りにできなくなってしまう障害です。指示された動きができない、ハサミなどの道具がうまく使えない。などの症状があります。
特徴③:論理的・分析的思考の低下
左脳は論理的な思考を得意とするため、計算ができなくなったり、物事を順序立てて進めることが苦手になったりすることがあります。
一生懸命に先生や家族が説明しても、論理立てて現状を分析することができないため、固定概念に囚われてしまうことが多いです。
右麻痺のリハビリ生活で家族が気をつけること・接し方のコツ
右麻痺のリハビリを進める上で、周囲のサポートは不可欠です。しかし、接し方を間違えると患者様のストレスとなり、リハビリの意欲を削いでしまうこともあります。
以下に周囲の人がサポートしやすくするための注意点やコツをお伝えします。

コミュニケーションは「短く・具体的に」
失語症がある場合、一度にたくさんのことを話かけると脳が処理しきれません。
- ・「はい」か「いいえ」で答えられる質問にする
- ・ジェスチャーか絵カードを活用する
- ・ゆっくり、落ち着いたトーンで話す
これらを意識するだけで、リハビリへの安心感が大きく変わります。
ただ、結論だけ伝えてもそれに至るまでの経緯が理解できないことが多いです。「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、結論に至るまでに幾つもの段階がある場合は少しずつゆっくり説明していきましょう。
麻痺した側(右側)から話かける
右麻痺の方は、意識がどうしても動く左側にばかり向きがちです。しかし、脳の自己修復機能である「神経可塑性(しんけいかそせい)」を促すためには、あえて麻痺している右側から話しかけたり、右側に物を置いたりして、脳に「右側の存在」を思い出させることが重要です。
手本を見せ、動きを分解して伝える
失行がある方には、実際に物品を使って手本を見せて、繰り返しトレーニングすることが効果的です。また、鏡や動画を使って自分の動きを見て分析することも大切です。
複雑な動作の場合は、動作を一番簡単な動作に分解して、分解練習をして行くことが必要です。
例「ペットボトルを取りたい時」:「腕を伸ばす」→「手を開く」→「握る」など。
今後の見通しとリハビリは?
回復を左右するポイント
多くの方が最も気になるのが「どこまで治るのか」という今後の見通しについてでしょう。入院してすぐや、退院が近づいていたり、退院してから少し期間の空いている方など全ての人が気になる点かと思います。
一般的な脳梗塞右麻痺の回復過程と、それに対してのリハビリ、回復を左右するポイントを解説します。
一般的なリハビリの限界と言われる180日の壁
一般的に180日の壁と言われている問題です。これは、脳梗塞になると一番回復するのが180日間(約半年)と言われています。その後のリハビリでは回復は難しいとされ、積極的にリハビリが受けにくくなってしまうことが現状です。しかし、実は180日を過ぎても回復する可能性は大いにあります。
脳には自己修復機能である神経可塑性(しんけいかそせい)が備わっています。脳梗塞で破壊されてしまった脳細胞の周囲が、代わりに破壊された細胞の役割を新たに担ってくれるようになる機能です。この機能は180日を過ぎても働くのです。脳の自己修復機能を活性化するためには、できるようになりたい動きを反復して、身体に覚えさせていくことが必要です。
この反復が180日間は入院中はほぼ毎日。退院後は多くて週に2、3回で行えていました。医療保険や介護保険を利用してのリハビリは180日を過ぎると積極的なリハビリは受けにくくなってしまいます。そのため、リハビリ頻度が少なくなってしまうと動きの反復が少なくなってしまい、回復のスピードも緩やかになってしまうのです。それが、リハビリの限界である180日の壁と言われるようになったのです。
それを打開するために、各地に自費でのリハビリ施設が開院して、年数やリハビリ回数に縛られることなく、リハビリができるようになってきています。自分に合った自費リハビリ施設を見つけて行くのも大切なことになりますね。
リハビリ・ラボでの右片麻痺に対するアプローチ
当院では脳梗塞、脳出血に特化した専門的な方法で片麻痺に対してリハビリを行っていきます。具体的なアプローチについては下記に記載をしていきます。

⒈ 川平法(促通反復療法)
麻痺した手足を正しい運動パターンで反復し、脳の神経回路を再建する手法です。神経回路は正しい方法で刺激をすることで、新たな回路が形成され、動作を再学習していきます。
前述した脳の自己修復機能である神経可塑性を最大限に引き出し、できるようになりたい動作を反復して行います。まずは一番簡単な動作(曲げる、伸ばすなど)を各関節で練習しつつ、最終的には実動作に繋げながらリハビリを行なっていきます。
失行のような症例に対しても、物品を交えながら反復して動作を行うことで、動作の改善が期待できます。
川平法の詳しい詳細は以下のページを参照してください。👇

⒉ 醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)
中国で開発された脳卒中専門の鍼(はり)治療です。脳の覚醒を促し、神経伝達を活性化させることで、運動機能や言語機能の回復を促進します。
その他にも、動作の中で身体が硬くなってしまう「痙縮(けいしゅく)」に対して効果のあるボトックス注射と同じような、筋肉を緩ませていく効果も期待できるとされています。
病院ではできない「鍼治療×リハビリ」の強み
病院では鍼治療は処方されることがなく、薬での処方が一般的です。鍼治療は身体の内部から全身を整え、その状態で正しい動きで反復してリハビリを行うことができるのが、当院の強みになります。
鍼が苦手な方でも、鍼を使わないツボ刺激等で代用しながら対応が可能ですので、気になった方はお気軽に体験、お問い合わせください。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
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リハビリと鍼治療の相乗効果
脳梗塞のリハビリにおいて筋トレだけでは不十分です。
- ・鍼(醒脳開竅法)で脳や身体を活性化させ、神経・筋肉を働きやすくする
- ・その後、リハビリで正しい動きを反復して学習させる
この「脳への刺激」と「正しい運動学習」の組み合わせが、脳梗塞リハビリの鍵になってきます。リハビリ・ラボでは上記の視点を重視してリハビリを進めていきます。
まとめ:右麻痺のリハビリに「諦め」は不要です
脳梗塞による右麻痺は、言葉の壁や動作の混乱など、非常に複雑な後遺症を伴います。しかし、脳の自己修復機能をうまく活用することで症状は変化してくる可能性もあるのです。
- 「もう半年経ったから変わらない」
- 「病院のリハビリが終わってしまった」
そう思って諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。あなたの「もう一度やりたいこと」を実現するために、もう一度一緒に前に進みませんか。
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この記事を書いた人

松浦 一将 理学療法士
JBITA公認 成人片麻痺基礎講習前講習1、2修了
川平法 基礎講習会終了
大学卒業後、回復期リハビリ病院へ入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。同病院で訪問リハビリも経験させて頂き、より患者様の「生活」に近い場所でリハビリに携わってきました。2022年ハート脳梗塞リハビリ・ラボへ入職。「麻痺をよくしたい」という方はもちろん、前職の経験も活かし、目標に向けた最適な自主トレや運動方法のご提案、情報提供も行っています。 皆様の何気ない「笑顔」を大切に、目標を達成して共に成長できるよう全力でサポートさせて頂きます。