脳梗塞の危険因子とは?リアルな事例から学ぶ発症リスクと予防法

2026.06.10

 脳梗塞を含む脳卒中患者数は、全国で約188万人います。「患者調査の概況」厚生労働省
 また、年間で約29万人の方が病気を発症しているという報告があります。ちなみに、私たちの施設がある名古屋市では、年間約5000人(1日13~14人)の方が発症していると推測できます。以前は100人に1人と言われた脳卒中患者数ですが、近年では65人に1人と、とても身近な病気となっています。

 この記事では、実際に脳梗塞になってしまった人の当時の生活習慣や発症時の様子をお伝えします。生活習慣から浮き彫りになる、脳梗塞の危険因子をお伝えすることで病気をリアルに感じていただきたいと思います。記事の内容が、今後の過ごし方や予防に役立てていただければ幸いです。

※実際の話を参考にしていますが、個人が特定されないように配慮しております。

愛知県在住 40代男性 脳梗塞

食習慣が脳に与えるダメージ

製造業で働くサラリーマン。

 仕事のストレス発散のため、週末になると暴飲暴食をする生活をくり返していました。ジャンクフードを好きな時間に好きなだけ食べ、お酒も好きなだけ飲む。酒量が増えてくると次第に、アルコール度数の高いお酒を好むようになりました。深酒し、そのまま倒れるように寝る事もしばしばあった。毎日のように下痢をして、おなかの調子もよくありません。健康診断では高血圧も指摘され、上の血圧が200を超える事もありましたが、気にもかけずそのまま放置していました。
 ある日突然めまいがして、布団で嘔吐してしまいます。普段とは違う姿に異変を感じた家族が、救急車を手配して、そのまま入院となりました。

脳梗塞ポイント①

アルコールの大量摂取は脳卒中の発症リスクを高めます。

 過度なアルコール摂取は、血圧上昇や動脈硬化を促進し、脳卒中のリスクを大幅に高めます。

 大量の飲酒は交感神経を刺激して血管を収縮させ、慢性的な高血圧を引き起こします。また、中性脂肪を増加させて血管にダメージを与えるほか、不整脈(心房細動)を誘発し、脳の血管を詰まらせる原因にもなります。

 リスクの大きさは「お酒の杯数」ではなく、含まれる「純アルコール量」で決まります。1日の純アルコール摂取量が69g以上(例、500ml缶3本以上)の大量飲酒者は、飲まない人に比べて脳卒中の全体リスクが約1.6〜2倍、脳出血のリスクは2倍以上に跳ね上がります。脳卒中を防ぐための1日の適切な摂取目安は、純アルコール20g程度(ビール500mL、日本酒1合など)です。これを超える過度な飲酒習慣がある場合は、減酒や休肝日の設定など、早急な見直しが必要です。

 上記の方は、高血圧になっているパターンが少なくありません。実は高血圧を放置している働く世代は多く存在します。高血圧そのものは痛みも何も感じないので、軽視してしまう傾向があります。

名古屋市在住 70代女性 脳梗塞

一度脳梗塞になったら再発に気を付ける

 もともとの高血圧が原因で、数年前に脳梗塞を発症しました。1回目の脳梗塞では、麻痺の程度が少なく、日常生活は支障なく送れていました。最初こそは気を付けていたものの、体が動くと、脳梗塞を患った記憶が、だんだんと記憶の片隅に置かれてしまいます。生活習慣を変えることなく、病院の受診もおろそかになってきていました。

 その1年後、再び悲劇が起きます。脳梗塞を再発してしまいました。再発後は、半身の麻痺が強く残り、上半身は肩から下が思うように動かせず、指は全く動かなくなってしまいました。歩行時は内反痙縮が強く出てしまい、膝下装具がかかせません。再発後に症状が悪くなってしまった例です。

脳梗塞ポイント②

再発予防のためには、生活習慣の見直しが必要です。

 脳卒中の再発は、初発時よりも症状を悪化させ、後遺症を重篤化させることがあります。

 脳卒中は再発しやすい病気で、5年以内の再発率は約35%(脳梗塞:約30〜35%、脳出血:約25〜30%)に上り、10年以内には約50%と、約2人に1人が再発します。再発を高める危険因子のトップ3以下の通りです

  • 高血圧 2~3倍のリスク
  • 心房細動 2~4倍のリスク
  • 糖尿病・脂質異常症 動脈硬化が進行する

 再発で症状が悪化する理由は、生き残った脳細胞や、リハビリによって回復していた脳機能が破壊されてしまうためです。さらに、新たな麻痺や認知機能低下等が重なりダメージが蓄積されると、寝たきりや要介護状態になるリスクが跳ね上がります。そのため、薬の服用や生活習慣の徹底による再発予防が極めて重要です。

名古屋市在住 60代女性 脳梗塞

糖尿病は血管をボロボロにする。

 体重管理には気を付けているやせ型の女性。やや血圧が高いも降圧剤を飲んでおり、コントロールは行っていました。ただ血糖値が高く、HbA1c(ヘモグロビンA1C)の値は、平均6.5%以上(通常の値は6%以下)で、10年以上は続いています。投薬はしていましたが数値は高いままで推移していました。ウォーキングなど、運動習慣はありません。

 ある日、足先にシビレがある事に気づきました。気のせいだと思っていたら数日後、歩行中に足をとられて転倒し、そのまま救急車で搬送された際に脳梗塞を診断されました。その後6か月間の病院生活を送っています。麻痺のレベルは少ないものの、後遺症として歩行困難とシビレが残っています。

脳梗塞ポイント③

糖尿病は動脈硬化を進行させ、脳卒中のリスクが高まります。

 糖尿病は、高血糖によって血管の内壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。さらに血液が固まりやすくなり、血栓が形成されやすくなるため、脳の血管を詰まらせる脳梗塞の原因となります。

 このため糖尿病患者は、糖尿病のない人と比べて脳卒中の発症リスクが約2〜3倍高いとされています。特に脳梗塞との関連が強く、女性では男性よりもリスク上昇が大きいことが報告されています。また、HbA1cの上昇は脳卒中リスクの増加と関連しており、HbA1cが1%上昇するごとに脳卒中リスクが約10〜20%高まることが分かっています。脳卒中を予防するためには、高血圧や脂質異常症などの管理とあわせて、適切な血糖コントロールを継続することが重要です。

終わりに

 今回ご紹介したのは、名古屋市の当施設に通院されていた方の実体験をもとにしたお話です。
 脳卒中はある日突然、大切な日常を奪っていきます。しかし、身体が出している危険サインを逃さずに対処すれば、防げる可能性は十分にあります。普通に生活ができるからと軽く考えず、専門家に相談し、行動してください。その行いが、今後の人生に大きく影響を与えるでしょう。

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この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

臨床歴20年。入社以来、主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設から鍼施術を担当しています。東洋医学的な考えと西洋医学的なアプローチを合わせて施術を行います。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。