こんにちは!鍼灸師の矢澤です。
最近の健康志向の中で、筋トレをして体に筋肉をつけることがブームとなっています。
Youtubeやinstagramでは、筋骨隆々の鍛え上げられた方の動画などが人気です。
どうすれば筋肉がつきやすいのか、どんな食事をとればいいのか?または、楽して筋肉をつけるにはどんな方法があるのかなどは、世間の関心ごとになっています。
一般の人にとっても、筋肉量と寝たきりになる事には関係があるといわれており、最低限に筋力、筋肉を維持することは、健康寿命を延ばすためにも必要なことになります。
では、筋トレで筋肉や筋力を増やすことは、脳梗塞、脳出血後遺症がある方々にはすすめるべきなのでしょうか?
筋トレと脳梗塞:昔の常識と今の常識
脳梗塞片麻痺における痙性麻痺に対して、筋力トレーニングを行うことは否定的なイメージが多くあります。
一番の理由は筋力増強が痙縮の増強につながると考えられているためです。臨床上では、麻痺筋の筋力強化を行うことで、連合反応や共同運動を発生させてしまい、動作を作る際の妨げになると考えられていました。そのように考えるセラピストは多く、好んで筋トレは行われないのが現状です。
連合反応とは…非麻痺側の努力性の動作に対して、麻痺側が不随的に動いてしまう現象。また、麻痺側の動作に対して麻痺側で不随運動が出てしまう事を、同側性連合反応といいます。
共同運動とは…中枢性疾患の回復期にみられる運動パターンです。回復に伴い運動パターンは独立していくのですが、回復期のリハビリの妨げとなります。例えば肩を挙げる動作を行うと肘や手首なども一緒に曲がってしまう現象です。
しかし、近年筋力トレーニングは、痙縮を増加させることなく、筋力改善の効果があると示されました。最近では、筋力トレーニングは脳血管障害の回復に有効であり、痙縮を軽減する可能性が示されています。
やり方を間違えさえしなければ、奨励すべきとなっています。
昔は間違いとされていたことも、今となってはやるべきだ!という事はたくさんありますよね。
最適なトレーニング量はどれくらいなのか?
トレーニングにも適性の量や回数というものがあります。一般的に筋力を増やそうとトレーニングメニューを考案した場合、最大筋力の70%~80%の強度で、10回を1セットとして、3~4セット、期間として8週間行うと筋力は優位に増えると示されています。これは健常者のエビデンスであり、脳血管障害の方に対して最適なトレーニング量はまだわかっていません。
その中でも推奨される事とすれば
①単関節を使用して行うものよりは、多関節を使用した大きな動きを伴う動作。
②低強度のトレーニングより、高強度のトレーニング。(負荷が多い方が良い)
③等尺性の動きより、筋の曲げ伸ばしがある、動的な動作。
ADLは改善されるのか?
筋力トレーニングは、脳血管障害でも痙縮を増悪させることなく筋力を上げることができる運動ですが、筋力向上がADLの改善とイコールであるというエビデンスはありません。
ADLの改善には、筋力強化だけでなく、日常動作や、ターゲット筋に沿った反復練習や機能訓練が不可欠となります。
また、トレーニングに伴い痛みや、痙縮の増加が出た場合はトレーニングを中止する必要があります。
脳血管障害によって、痙縮や麻痺が起きることで脳のシステムは、動作を行う際に複雑に入り組んだ回路を作り出します。どれか一つがよいという方法はなく、症状に対して包括的にプログラムを作成するのが、現在リハビリのスタンダートとなっています。
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