「咳が止まらない」「夜寝るときに咳がでる」「咳と痰が一緒に出る」
など、咳によるトラブルを経験している人は沢山います。今回は、季節の変わり目などにも起こりやすい咳に関して解説します。この記事を読めば、咳について少し詳しくなれます。また、当施設で咳に対して使用している体のツボも紹介します。
咳の原因
咳は多くの人が経験のある生理現象です。咳とは簡単に言うと、喉から入ったウイルスや細菌、異物を外部に吐き出そうとする行為で、体にとっての防衛反応になります。咳がうまくいかないと、痰がたまったり異物が気道に残ることで肺炎になってしまう危険があります。
気管と食道
我々の喉は、ご飯を食べる際は食道を通過し、呼吸をする際は気管を通過するように仕分けをしてくれます。この部分を喉頭と呼びます。ここには喉頭蓋や声帯という蓋が存在しており、呼吸をする際は開いています。一方で、食事によって食べた物が通過する際は、しっかりと蓋が閉じます。それにより食物が喉頭や気道に入るのを防いでいます。体の正中線の前にあるのが気道で、後ろにあるのが食道です。
咳がでる疾患
咳が止まらないなど、普通の咳とは違う場合、他の疾患を疑う可能性があります。代表的なものを上げていきます。
① 喘息
喘息(気管支喘息)は、呼吸の際空気の通り道となる気道(特に気管支)が慢性的に炎症を起こし、気道粘膜が敏感となり通り道が狭まることで症状が出現します。主な症状は
・痰がでる
・咳がでる
・息苦しさや息切れがする
・喘鳴(呼吸の際にフューフュー、ゼエゼエという音が出る)
・胸苦しさ
夜間~早朝にかけて、また、季節の変わり目に起こりやすいのが特徴です。
発症年齢は幼児期に多く、子供の5%が喘息持ちといわれています。男子の割合が多く、ほとんどアレルギーが原因です。40代以降に発症する成人の喘息は、半数以上が初めてといわれます。年齢を重ねて急に症状が現れることがあります。
② 肺炎
肺の中の肺胞という部分が炎症を起こす病気です。肺炎が起きる原因は細菌感染によるものが多く、その中でも肺炎球菌が一番多くみられます。インフルエンザなどのウイルスでも発症することがあります。また、高齢者に多い誤嚥性肺炎は、飲食物を飲み込む力が衰える事で、気道に異物が混入してしまい発症します。そこに含まれる細菌によって肺炎が発症します。
症状は、激しい咳を伴い、高熱、息切れ、胸の痛み、喘鳴などが起こります。症状は風邪に似ていますが、激しい咳や高熱が1週間以上続く場合は、医療機関で適切な処置をしてもらった方が安全です。
③ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは主にタバコの煙を長期的に吸入することで起きる肺の炎症性疾患です。以前は肺気腫や慢性気管支炎など診断されてきました。長期喫煙による生活習慣病であるため、中後年の発症がほとんどです。潜在患者を含めると500万人以上がいるといわれています。
主な症状は呼吸のしにくさです。階段の上り下りや、少し長めの距離を歩くとすぐ息切れをしてしまいます。また、咳や痰が長時間続きます。風邪や喘息と同じような症状が出る事もあります。
COPDは放置すると悪化する進行性の病気です。患者さんの意識改革と早期治療が重要です。
横になる、夜になると咳がでるのはなぜ?
呼吸によって取り入れた空気は、気管と気管支を通って肺に到達します。管となる気管の太さは自律神経によって支配されています。自律神経は、交感神経と副交感神経の2つがあります。交感神経は、運動を行ったりストレスに対応したりする時に働く神経です。その際、より多くの空気をとり入れる必要があるため、気管を広げるように指示を出します。一方で、副交感神経は休んだりリラックスする際に働く神経です。副交感神経が働くと、気道が狭くなるため、咳をしやすくなります。
昼間は問題無いが、夜間寝るときに咳がでてしまうのは、副交感神経の働きが原因です。日中の安静時、横になるなどの状態でも咳がでる場合があります。その際はいったん立ち上がる、座位になるなど、体位を変換させることで咳が収まることがあります。
脳梗塞と咳
咳反射とは…気道内に異物(ウイルス、細菌等)が侵入すると知覚受容体が刺激されます。受容体や神経線維の興奮が延髄毛様体の咳中枢に伝わり、そこから横隔神経や迷走神経に信号を出し、咳が起こります。また、単なる延髄の反射だけでなく、「咳がしたい」という衝動が起き、大脳皮質の運動野からの指令が、延髄の咳中枢をコントロールしていることも分かっています。
脳梗塞や脳出血になると中枢神経の機能が一部失われます。そのため、運動野からの咳のコントロールが正常に働かなくなることがあります。よって、稀に後遺症で「咳がでたらなかなか止まらない」という症状が出現します。
咳に効くツボは
咳の治療で、鍼灸治療を希望される方は結構いらっしゃいます。
鍼灸の作用は主に2つで
・自律神経の調整
・体性内蔵反射
これらを狙って、身体に影響を与えて咳を抑えます。また、咳の種類、痰の種類、熱の有無などの聞き取りを行い、東洋医学的な視点から、内臓の調整を行っていく事もあります。その中で、当施設で行う鍼治療において、咳に対して効果が高かったツボを紹介します。
首、背中の背骨から親指一つ分外側にある2つのラインです。
膀胱経という経絡の流れがあり、肺と関係あるツボも存在します。
ツボ一点を押すよりも、このラインを擦るように刺激を入れます。個人差はありますが、それまでの咳が嘘のように止んだ例を経験しています。
最後に
今回は咳について解説しました。
通常の咳なら問題ありませんが、長引く咳などはいろいろな疾患の可能性があります。
特に肺にかかわる疾患であると、ほぼ100%で悪い咳がでます。
その場合は早期医療機関への受診をお勧めします。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
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この記事を書いた人
矢澤 大輔 鍼灸師
修士号(医科学)取得
業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。