嚥下障害と脳卒中の関係

2024.06.11
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こんにちは。今回は嚥下障害について知っていきましょう。

嚥下とは

 嚥下とは食べ物や飲み物を、口から入れ、喉を通り食道を通過して、胃へ送り込む一連の動作を言います。その過程には、様々な神経や筋肉が協調して働いているため、複雑なプロセスをたどります。何らかの原因で嚥下機能が低下すると、誤嚥によって食物が気道に侵入し、肺炎(誤嚥性肺炎)の原因となってしまいます。

肺炎は日本人の死亡原因の第5位で、95%以上は65歳以上の方です。そのうち約60%が誤嚥性肺炎という報告もあるため、嚥下障害の予防、リハビリは死亡リスク管理にとっても非常に重要となります。

日本人の死亡原因 (令和3年)厚生労働省

嚥下障害の原因

嚥下障害とは、嚥下機能が低下し、口の中のものをうまく飲み込めなくなる状態をいいます。

中枢性疾患

 脳血管障害やパーキンソン病などの中枢性疾患により、嚥下障害を発症します。中枢のどの部位が障害されたかによって病態は様々であるが、非常に複雑な経路をたどるため、症状は一様ではありません。障害部位によって大まかに以下の二つに分けられることができます。

球麻痺

 脳幹の出血や梗塞によって、特に延髄の神経が損傷を受ける事で起きる麻痺の総称です。その麻痺の一つが嚥下障害です。実際には意識障害、構音障害などの高次脳障害を伴う事が多く、様々な動作が障害されます。

仮性球麻痺

 脳の上位ニューロンの障害によって引き起こされる障害の総称です。延髄の脳神経核そのものが障害される球麻痺とは異なり、脳の皮質や皮質脊髄路が損傷されることで発生します。症状は球麻痺と似ていますが、障害部位が異なります。

延髄に嚥下中枢がある

末梢性疾患

 声帯を動かすのに重要な反回神経の麻痺や、糖尿病やギランバレー症候群による末梢神経障害で嚥下作用に支障をきたします。様々な末梢神経が嚥下や摂食には作用しています。例えば顔面神経が損傷すると、口から物がこぼれる、味覚障害などが出現してしまいます。

筋力低下

 筋原生疾患や、不使用による廃用による筋力低下は嚥下障害の原因となります。咬筋、頬筋など、噛む力が低下すると、捕食、加工処理、食塊形成、送り込みが障害されます。舌骨下筋群の低下は、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

心因性障害

 神経性食欲不振症などが原因疾患となる。身体的な問題や器質的な原因がありません。

加齢

 加齢によって生理機能全般に低下が認められることが原因である。疾病によるものと違い、進行が遅い為、障害があっても工夫して飲食している場合が多い。筋力低下、神経の変性、唾液分泌の減少、歯の問題など、加齢に伴う様々要因が影響してきます。

嚥下機能

 嚥下の一連の動作は5段階に分ける事ができます。各段階の動きを把握することが、訓練内容、食事形態を考えるうえで有効になってきます。

1 先行期

 食物を口に運ぶまでの時期。食べ物を視覚的に認識して、嗜好、関心、食欲、量などを無意識に計画しています。そして、手や道具を使用して、食物を口腔内へ運びます。この段階がちゃんと達成されることが、のちの嚥下プロセス重要な役割を果たします。

2 口腔期準備期

 食物を口の中に取り込み、嚥下運動が始まる直前までの随意的な運動の時期。口の中で食べ物を処理する段階です。食べ物を咀嚼し、唾液と混ぜ合わせることで、飲み込みやすい形にします(食塊)。顔面神経、三叉神経、舌咽神経、舌下神経が関与します。

3 口腔期

 加工処理された食塊が口腔内から咽頭へが移動していく、不随意的な運動の時期です。ここでは閉口し,舌尖が硬口蓋 に密着し,舌筋の後方への収縮に伴い,食物は喉頭蓋谷へ送り込まれます。これと同時に軟口蓋が挙上して鼻咽腔を閉鎖します。

4 咽頭期

 食べものが咽頭を通過し、食道に送られる段階です。食塊が咽頭に送られると嚥下反射がはじまり、誤嚥を防ぐ機能が働きます。食塊の感知は、迷走神経から求心性のしげきによって延髄の孤束核、そして、嚥下中枢へ伝えられます。嚥下中枢からの遠心性の刺激によって、顔面神経、三叉神経、舌咽神経、迷走神経、舌下神経を介して、各筋肉を反射的に働かせます。

 具体的には、喉頭蓋が倒れて気道を塞ぐことで、気管への食塊の誤嚥を防ぎます。また、軟口蓋が上がって、鼻腔との通路を塞ぐことで、鼻腔への逆流を防ぎます。咽頭の挙上、喉頭の収縮によって食道が開き、食塊が一気に下っていきます。

5 食道期

 食塊が食道を通過して、胃に送られるまでの時期です。食道の蠕動運動によって食塊は胃に送られます。

脳卒中による嚥下障害

嚥下障害の原因疾患の内40%が脳卒中といわれています。

また、脳卒中急性期においては、高確率で嚥下障害を合併します。30%の方に誤嚥が認められ、5%  o 方が、後遺症として誤嚥が残存してしまいます。

脳の負傷部位

大脳皮質 皮質下型の梗塞、出血では高次脳機能障害を合併しやすい。

大脳基底核 ドーパミン作動性神経と迷走神経の機能が低下する。サブスタンスPの放出が抑制されて、嚥下反射、咳反射の低下が起きる。

脳幹 典型例は延髄外側の障害で、嚥下反射の中枢の障害が起きるため、嚥下の咽頭期の運動が低下する。

まとめ

 今回は嚥下障害について、嚥下の仕組み、嚥下になる病態などを説明しました。難しい内容となってしまいましたが、最後まで見ていただきありがとうございます。次回は、嚥下の5期において、働く筋肉、神経について詳しく説明し、はりなどの治療法も記載したいと考えております。

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この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。