脳梗塞は前触れもなく突然やってきます。大切な家族が脳梗塞になってしまったら、
どのように接したらいいのか?
これ以上よくならないのか?
脳梗塞を発症した本人も不安でいっぱいですが、それと同じくらい家族も不安でいっぱいだと思われます。
本記事では、発症してからの時期ごとの回復過程とそれに合わせて家族がどのように接すると良いのか、どのような気持ちでいればいいのかについて解説しています。
この記事を読み今後訪れる不安がわかることで、少しでも今の不安が和らぐことを祈っています。
脳梗塞になったらどのような経過を追う?
まず始めに脳梗塞を発症してからどのような経過を追って退院になるのかを説明します。
①急性期病院
②回復期病院
③自宅退院もしくは施設に入所
多くの方は①→②→③の順で進んでいきます。
①急性期病院と②回復期病院について、また①、②、③それぞれで行われるリハビリについて簡単に説明します。
①急性期病院
急性期病院の「急性期」とは病気が発症し急激に健康が失われ不健康となった状態を意味しています。
そのため、急性期病院の役割は「健康な状態に戻すこと」
つまり、「命を守ること」になります。
発症後おおよそ14日間以内が急性期(命の危機)の目安と言われており、
○○市民病院、○○厚生病院、○○大学病院など病床数(ベッドの数)が多い病院が急性期病院にあたります。
上述したように、急性期病院の一番の役割は、命を守ることになります。そのため、リハビリを積極的に行う病院ではないことが多いです。
命の安全が保障されたら、次の「回復期病院」に転院しますので、急性期病院に入院する期間は長くても1カ月程度であることがほとんどです。
②回復期病院
回復期病院に転院できたということは「命が安全」であることがおおむね保証されているということです。
そのため、ここでは積極的に身体の回復のためにリハビリを行う時期であり、
多くの回復期病院では、1日2~3時間のリハビリを365日実施します。
そのことから、回復期病院は
リハビリ病院 と呼ばれることが多いです。
回復期病院の役割は「家に帰ること」を担っています。
もちろん麻痺の回復も目指していますが、それよりも早期に退院できることを目指しリハビリを進めます。
そのため、麻痺した手足よりも麻痺していない手足を上手に使う方法を身に着けることが優先されます。
入院期間はだいたい3カ月程度ですが、最長5~6カ月入院できることもあります。
退院の1~2カ月ほど前には、自宅に手すりを設置したり、段差を解消するなど、当事者の方が自宅に帰れる準備をします。
③退院後の生活
回復期病院を退院すると、自宅もしくは施設で生活を始めます。
約70~80%の方が自宅に復帰できるというデータも出ています。
退院後のリハビリは大きく以下の3つに分かれます。
・訪問リハビリ:自宅に療法士が訪問し、自宅の中で実際の生活に合わせてリハビリを行う
・デイサービス、デイケア:半日もしくは1日施設に通院しその中で集団体操を行う
・外来リハビリ:病院に通院し40分~1時間のリハビリを行う
この3つの内、どのリハビリを進めていくか退院前に相談員の方と話し合って決めていきます。
↓脳梗塞の方に必要なリハビリについてはこちらをご覧ください↓
どのような不安がありますか?
では、ここから時期ごとに訪れる本人様の不安と家族の不安でよく聞かれる内容を紹介いたします。
①急性期病院
脳梗塞当事者の不安
・目が覚めると「どうして私が」と自分を責めてしまう
・一刻も早く動きたい。焦りでいっぱい。
家族の不安
・目を覚ますのだろうか。
・(目を覚ましてからは)「今後ずっと車椅子生活になるのだろうか」
急性期病院に入院している時期は発症から間もないこともあり、漠然とした不安が大きいかもしれません。
本人様も意識が不明瞭であったり、発話が困難となったりして、うまくコミュニケーションがとれないと余計に不安を感じてしまうことも少なくありません。
ただ、発症した直後の今が最も状態が悪いときです。
一命をとりとめてからは回復する一方であることがほとんどになります。本人も家族もわからないことだらけで色々調べると思いますが、焦らずに病院のスタッフを信じてみましょう。
それでも不安に感じたら当施設に相談ください。
②回復期病院
脳梗塞当事者の不安
・早く家に帰りたい
・今後、ずっと手足は使いにくいのかな
・いつになったら完全回復するのだろうか
家族の不安
・目に見えて回復しているのはわかる!少しずつ歩けるようになってきてる!いつになったら車椅子は卒業できるのだろう。
・病前より怒りやすくなったり、泣きやすくなったかな?
・本人が頑固になった気がする。あまりこちらの意見を聞いてくれない。
回復期病院は、名前の通り、どんどん回復していく時期になります。
車椅子で生活していた方が歩けるようになったり、意識が不明瞭であった方がジェスチャーで意思疎通ができるようになったりします。
ただ、一方で状態が回復してきたことによって出現する症状があります。それが「高次脳機能障害」と呼ばれるものです。
感情が出やすくなったり、考えを固執したりしてしまいます。
そして、目に見えにくいこの症状が家族を不安にさせてしまうことも少なくありません。
深くとらえずに「そういうものだ」と割り切ることも大切です。
③病院を退院後の生活
脳梗塞当事者の不安
・リハビリの時間が急激に減った
・デイサービスは集団体操になってしまう。もっと個別でリハビリしてほしいのに。
・これ以上よくならないのかな。
・同じ悩みをもった人たちとお話をしてみたい。
家族の不安
・一人で動くと危ないから目を離すことができない。
・再発しないか不安。
・家に帰ってきてから回復していないのでは?やる気も落ちちゃったみたい。
家に退院できたことは大変喜ばしいことではある一方で、本人から目を離せなくなって家族の自由が減ってしまうケースも少なくありません。そのときはケアマネージャの方に相談し、デイサービスやショートステイを活用することを検討してみてください。
介護は「しすぎる」と本人にとっても家族にとってもマイナスになることもあります。
また、本人の悩みとしては病院から退院して、「もっとよくなるぞ」と意欲を持ちつづけることが難しいということです。
意欲が落ちてしまう要因としては、周りに相談できる相手や一緒に励む人がいなくなってしまうことが大きく関与しています。
入院しているころは、リハビリ室に行くと多くの人が頑張っている光景が目に入り、自然と自分もやる気がでますが、家に帰るとそうはいきません。
意欲を維持するためには、意欲の高い療法士とリハビリを進め、回復を実感することが一番です。
不安に対する解決方法
私自身、多くの脳梗塞の当事者、その家族と関わってきてたくさんの不安を聞いてきました。
その不安を和らげるには、一人で抱え込まずに人と関わることがとても大切であると実感しています。
そこで、どこで同じ悩みの人や相談に乗ってくれる人と関われるのかをいくつかご紹介いたします。
脳梗塞当事者の不安
・病前から仲良くしていたコミュニティに参加する
→親族、友達、仕事仲間 など
・同じ病気で悩んでいる人のコミュニティに参加する
→FacebookやinstagramなどのSNSコミュニティ、脳フェスなどのオフラインコミュニティ
・デイサービスに通う
家族の不安
・ケアマネージャーに相談する
・脳梗塞になった家族のコミュニティに参加する
→SNSのオンラインコミュニティ
・親族や友達、仕事仲間、ママ友に話を聞いてもらう
→本人にデイサービスやショートステイを利用してもらい、自分時間を作ってリフレッシュする。
相談できる相手を探している方は、我々がお力添えしますのでお電話やLINEでお気軽にご連絡ください。
また、その他の不安を和らげる方法として、
本人がいきいきと頑張れる環境を提供し、満足のいくリハビリを実施することも一つです。
家族の支えと本人の意欲で回復し続けた利用者の紹介
年齢・性別:60代・男性
病名:脳梗塞(右片麻痺)
目標:娘の結婚式でバージンロードを歩きたい
家族の希望:かっこいいお父さんを見たい
来院当初は、杖をついて歩くことはできていました。しかし、本人様・家族ともに「結婚式で歩けるようになるのか」という不安を抱えておられました。
家族の全面サポートの元リハビリを進めていきました。
家族がサポートしてくださったことは、通院を車で送迎(片道30分以上)、結婚式場の撮影、励ましの言葉 など多くのサポートをいただけました。
我々はその期待に応えるべく、杖なし歩行の安定性と速度の向上を第一目標に進め、バージンロードの歩き方という普段とは違う歩き方にも対応できるバランス機能の向上を図りました。
1年かけて頑張った結果、かっこいい姿でバージンロードを歩くことができました。
関わった皆さん、感動で涙を流すほどでした。家族の支えがもたらす強さを感じた経験となりました。
長編の動画にはなりますが、是非ご覧ください。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
ご予約はお早めに!
この記事を書いた人
杉山 一輝理学療法士
JBITA公認 成人片麻痺基礎講習会修了/川平法 入門編講習会修了
大学卒業後 リハビリ専門病院に入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。経験年数で評価されやすい業種だからこそ、新人時代から技術の質と学ぶ密度にこだわってきました。院内で積極的に勉強会を開き先輩・後輩関係なく、学んだ技術・知識を伝達しました。2021年 ハート脳梗塞リハビリ・ラボに入職。「リハビリ難民」の方々、特に「麻痺を良くしたい」「今のリハビリでは物足りない」と思っている方々に満足いただけるサービスを提供できるように全力を尽くします。