帯状疱疹後神経痛と鍼灸

2023.09.02

「50歳を過ぎたら帯状疱疹に気を付けましょう。」

最近、こんなCMをよく見かけるようになりました。某有名俳優さんを起用して、大々的に啓蒙活動を行っています。帯状疱疹は50歳を過ぎると70歳代をピークとして発症率が高くなっていきます。また、発症後約20%の方が帯状疱疹後神経痛に移行し、長い期間この病気に苦しむことになります。その傾向が近年強くなっているため、このようにテレビで注意喚起を盛んに行っています。帯状疱疹および帯状疱疹後神経痛については以前、記事を書きましたのでそちらを参考にしてみて下さい。以前のブログはこちら

今回の記事は、更に詳しく内容を掘り下げるとともに、帯状疱疹後神経痛に対する鍼灸治療は効果があるのかを、文献の総評からお伝えします。

帯状疱疹とは

帯状疱疹は、子供の時にかかる水ぼうそうの元となる水痘ウイルスが原因となります。

水ぼうそうが治ってもこのウイルスは、脊髄神経根に潜伏しています。しかし、加齢などで免疫が低下してくると潜伏したウイルスが活性化されて帯状疱疹の症状が出現します。これが、50歳代を過ぎると帯状疱疹になりやすい理由です。

症状は、チクチク、ピリピリした痛みに、皮膚上に赤い発疹が伴います。夜も寝むれないような状態になる人もいます。通常は3か月ほどで症状は消失しますが、20%位の人は後遺症が残ってしまいます。これを帯状疱疹後神経痛といいます。皮膚の発疹がきれいになっても、ウイルスによって神経自体が損傷されてしまうので痛みだけが残ります。数年かけて痛みに悩まされてしまうケースも少なくありません。

帯状疱疹後神経痛とは

上記で簡単に説明しましたが、水痘ウイルスの活性化が続くと、神経のダメージが大きくなり、帯状疱疹後神経痛のリスクが大きくなります。よって帯状疱疹の治療はスピード勝負となります。帯状疱疹後の神経痛は神経線維そのものの障害による痛みです。具体的には、神経線維の髄鞘を形成しているシュワン細胞の障害です。シュワン細胞がウイルス感染により死滅してしまい、神経線維が変性を起こした状態となります。

痛みの種類 アロディニア…風があたる、服が擦れる、冷える、熱するなどの普段は何とも感じない刺激を痛みとして自覚してしまう症状です。これは帯状疱疹後神経痛の特徴の一つです。海外の文献によると帯状疱疹後神経痛になる人は罹患者の20%で、その60%が2年以上も痛みが残存するとの報告があります。

鎮痛薬が効きにくい帯状疱疹後神経痛

痛みを感じる時に起きる一般的なルートを簡単に説明します。皮膚や筋肉などの組織が損傷すると発痛物質が知覚神経の受容器を刺激し、電気信号として脊髄を伝って脳の感覚中枢に伝わります。そして痛みとして自覚します。一般的な鎮痛薬はこの発痛物質の産生を抑える事を目的としています。

しかし、帯状疱疹後神経痛の場合先述したように、ウイするが知覚神経そのものにダメージを与えます。痛い場所に発痛物質が有ろうが無かろうが、損傷した神経がダイレクトに痛み信号を脳に送りつけます。よって薬剤治療は、神経自体に作用するものを使用することが多くなります。

予防できる帯状疱疹

帯状疱疹にはワクチンがあります。帯状疱疹の発症や重症化を予防する効果があります。子供の頃に水ぼうそうにかかったことがある人は、水痘ウイルスに対しての免疫がありますが、年齢とともに弱ってしまいます。改めて摂取することで免疫を強化しておきます。ワクチンの種類は2種類です。1つ目は一般的に予防接種として使用する、弱毒性水痘ワクチン。2つ目は組み換えDNA技術を応用した乾燥組み換え帯状疱疹ワクチンで、こちらのほうが予防率が高い分、副作用が強く費用が高いとされています。対象は50歳以上で、各種医療機関で受ける事ができます。まずはかかりつけ医に相談してみて下さい。

効果が期待できる鍼治療

帯状疱疹をネット検索すると、その後ろの自動キーワードには鍼灸という文字がよくみられます。鍼灸は帯状疱疹に効果があるのでしょうか?

大学病院を含めて、治療期間の短縮を目的として鍼治療を行っている施設はたくさんあります。鍼を刺してそのままにする置鍼に比べて、その鍼に電気を流す鍼通電の方が鎮痛効果は増強します。

また、西洋による投薬治療を行っている人に対して、プラスして鍼治療を行うと、投薬治療単体よりも痛みの程度が軽減し、帯状疱疹後神経痛の発症率が低かったという分析もあります。

最後に

今回の記事は、前回記事を更に深堀して帯状疱疹について記載しました。

この記事を書くきっかけとなったのは、脳梗塞、脳出血患者さんが、帯状疱疹後神経痛になってしまうが多いということです。脳梗塞、脳出血になると免疫力が落ちるため、発症リスクがかなり高まります。そういった意味で、同じように悩む方の少しでも力になれればと思っています。

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この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。