こんちは!鍼灸師の矢澤です。暑い日が続きますがいかがお過ごしでしょうか。
こまめな水分補給で熱中症対策をお願いします。牛乳を飲むと、血中タンパクが増加して血液量が増加しますので、暑熱順化しやすい体となります。
国民病の腰痛
日本人は成人になると8割の方が腰痛を経験すると言われています。まさに国民病といってもいいでしょう。ラボの3人のスタッフも慢性的な腰痛もちで、腰が悪い人の気持ちはよ~~くわかります。そんな腰痛ですが、「8割は原因不明」と言われています。私の記憶が確かなら、10年程前の腰痛ガイドラインに記載されていたような気がします。実は、治療家業界ではこの言葉が独り歩きしていて、良くも悪くもいい加減に解釈されています。中には「原因がわからないものは病院に行っても意味がない!痛みの悪循環を作り出している歪みを正すことが根本解決!」という事を言っている人は沢山います……。原因がわからない=どんなことをやっても良いと考えて、ワンパターンの治療に陥ってしまう事は良くありませんね。
実はこの8割というのは、非特異的腰痛が8割という意味です。
簡単に説明すると、腰痛には、特異的腰痛と非特異的腰痛があります。前者は医師の検査及び画像検査で原因が特定できるもの、後者は画像で原因が特定することが難しく、原因がわからないものと分類されています。画像によって明らかな脊椎間の狭窄があっても、下肢の痺れがある人もいれば、出現していない人もいます。痛みがある人もいればいない人もいます。
しかし、画像所見で判断できない腰痛でも、徒手検査、動作分析、問診等に精通した医師や治療家が見立てを行うと、ある程度原因を突き止めることができることもわかっているので、実際に原因不明は3割くらいともいわれています。
仙腸関節
話を戻していきます。今回のテーマである仙腸関節は、腰痛の原因の一つとなる仙骨の関節です。
図に示しています。
仙腸関節は寛骨と仙骨それぞれの耳状面が関節面となり構成されています。
ここの部分に炎症が起きたり、不都合が生じると、仙腸関節の患部に痛みが出てきます。患者さんはここもいわゆるコシの位置と勘違いしてしまい、腰が痛いと訴えることもすくなくありません。腰全体に違和感がある際に、ここを押してみたり、椅子に座った状態で骨盤を前傾させてみたりして、仙骨周囲に放散痛があれば仙腸関節が原因と言ってもよいでしょう。また、下肢や腰へ関連痛を出すことがあり、他の疾患とも混同されやすく見逃してしまう事があります。
動きのある関節
肩や肘のような関節とは違い、いくつもの補強靭帯(前仙腸靭帯、後仙腸靭帯、骨間先行靭帯、仙結節靭帯、仙棘靭帯)によって動かないように固められています。以前は不動関節とされていましたが、実は少しだけ可動性があり、角度でいえば2°、移動量では1mm~2mmあります。この微量な「遊び」が重要で、ビルの免震構造のような役割をして上半身や下半身の衝撃を緩衝しています。
このわずかな遊びが、不良姿勢や不良荷重によって負担がかかることで無くなってしまったり、逆に妊娠後のホルモンバランスの影響で靭帯が緩んでしまい、遊びが増えてしまう事で、仙腸関節由来の痛みの原因になってきます。
仙腸関節障害の診断
仙腸関節の障害はレントゲンやCTにはほとんど現れないようです。
腰痛の状態、問診、徒手検査から徐々に狙いを定めながら診断に至ります。
症状としてよくあるのが、腰や臀部、特に上後腸骨棘付近にピンポイントの痛みや圧痛がある。太ももから下腿にかけて放散痛がある。長時間立っている事や座っている事が困難である。階段の上り下りや歩行動作初期に痛みが出現するといったようなことです。問診での状態から、仙腸関節に疑いをかけ、仙腸関節ストレステスト、パトリックテスト、開廃テストなどを行い徐々に絞っていき、最終的な診断を下します。最初は腰部椎間板ヘルニアや坐骨神経痛などを疑いながら検査を行って、症状と検査が一致しなかった場合に、消去法で実は仙腸関節障害であったという事も良くあるようです。
最後に
治療院に来院される方の症状で一番多いのは腰痛です。
痛み我慢して放置してしまうと、痛みが痛みを呼ぶ状態となります。脳が記憶してしまうと慢性的となりなかなかとれない症状となってしまいます。仙腸関節痛は腰痛の原因として以前から注目されていました。腰に鍼やマッサージをしてもなかなか取れない痛みがあれば、一度疑ってみても良いかもしれませんね。
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