脳梗塞は、日本における主な死因の一つであり、日常の食生活がそのリスクを大きく左右します。現代の食生活は、手軽で安価であるがゆえに、加工食品や塩分の多い食事が中心になりがちで、脳梗塞のリスクを高めています。この記事では、脳梗塞になりやすい可能性のある食事と、予防に役立つ食事の具体例について紹介し、日々の食生活で意識すべきことポイントを解説します。食生活を見直すきっかけとなり、脳梗塞予防につなげていける事を望んでいます。
脳梗塞にならないためには、何に気を付けたらよいのか?
脳梗塞は遺伝するんですか?という質問をいただくことがあります。親や兄弟が脳梗塞になった場合、なっていない場合と比較して約2倍脳梗塞の発症リスクは上昇するといわれています。ただ、遺伝するのは、高血圧、高脂血症、血栓症といった脳梗塞発症の原因となる症状に関してです。これらは普段の食生活や生活習慣が大きく影響していますので、実は、後天的な要素が大きく関係してきます。
脳梗塞にならないためには、高血圧、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、運動不足、ストレス、の予防や改善が重要とお伝えしています。再発についても同じことが言えます。この後記載するのは、高血圧、高脂血症、動脈硬化、糖尿の管理と密接に関係する食事についてです。
脳梗塞になりやすい食事内容
1. 高塩分の食事が高血圧の原因となる
塩分の摂取量が多いと、血圧が上昇し、脳梗塞のリスクが増加します。塩分を摂取すると喉が渇き、大量の水分を摂取した経験はあると思います。すると血液の量が増加し、血管の圧力が上昇して心臓へ還流量が増えます。このように、血管の圧力が高い状態である高血圧が続くと、血管と心臓に負担がかかり続けて脳梗塞のリスクが高まります。脳梗塞発症時の血圧が200mmHgを越えていたという例は沢山あります。
日本人は、一日に10g以上の塩分を摂取していると言われていますが、これは摂取目安量を越えています。1日の塩分摂取量の目安は、男性で7.5グラム、女性で6.5グラムです。特に、加工食品やインスタント食品、ファストフードには大量の塩分が含まれており、無意識のうちに塩分を多く摂取してしまうことがあります。
2. 飽和脂肪酸が多い食事は血液がドロドロになる
お肉の脂身や加工肉、揚げ物、バターなどに多く含まれる飽和脂肪酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させるため、動脈硬化を警戒します。食の欧米化や、食の簡素化(安価に手に入る)によりこれらを含む食事が多くなっています。血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが基準値より高いと高脂血症になります。高脂血症により動脈硬化がすすむと脳の血流が阻害され、脳梗塞のリスクが警戒されます。飽和脂肪酸を含む食事の過剰摂取は注意が必要です。
また、マーガリンやファストフード、お菓子などに含まれるトランス脂肪酸は、心血管系の健康に悪影響を与え、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めるとして知られています。
3. 糖尿病は血管をボロボロにする
脳梗塞患者さんの既往歴を確認すると、糖尿病に罹患している方が沢山います。糖尿病には様々な症状がありますが、その一つに血管がもろくボロボロになる血管病があります。血管がもろくなり詰まりやすくなってしまいます。そのため、血糖をコントロールし、糖尿病を管理することが重要となります。甘い飲み物や菓子類に含まれる砂糖の過剰摂取は、血糖値の上昇を招き、糖尿病のリスクを高めます。糖尿病は脳梗塞の重要なリスク要因の一つであり、血糖コントロールが悪化すると血管の健康に悪影響を与えます。
4. アルコールの過剰摂取は危険
適度なアルコールは脳梗塞のリスクを下げ、「百薬の長」と言われています。目安としては日本酒で一合、ビールで500ml一本程度が良いとされています。しかし、過剰摂取は、血圧をあげ、高脂血症の原因となります。実際に男性の脳梗塞患者さんに話を伺うと、病前は「毎日記憶を無くすまで飲んでいた」「普通にビールではもう酔わなくなっていた」など、多量飲酒にまつわるエピソードを聞くことがあります。何でも適量までにしておくことが重要です。
脳梗塞を予防する食事内容
1. 野菜と果物を積極的に摂取する
野菜や果物には、野菜や果物には、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれており、血圧のコントロールや動脈硬化の予防に効果的です。また、血圧を安定させるカリウムが豊富に含まれており、脳梗塞の予防に役立ちます。 カリウムはナトリウム(塩分)を排出して、血圧を下げる働きがあります。よって、高血圧症に、高カリウム食が注目されています。
他の作用として、緑黄色の野菜や果物には抗酸化物質も多く含まれており、血管の健康を維持します。量の目安としては1日に350g以上の野菜を摂取することを推奨しています。
カゴメ株式会社HP参
2. 魚を中心とした食生活をする
魚には、血液をサラサラにする効果があるオメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、脳梗塞の予防に効果的です。 オメガ3脂肪酸のEPAやDHAには、中性脂肪を下げる効果があると報告されています。ちなみに、記憶力低下の予防にも効果があるとされています。サバやサーモン、イワシなどの青魚に多く、研究によると週に2回以上の魚料理を取り入れると、脳梗塞のリスクが軽減されると言われています。
3. 全粒穀物や豆類は腸内環境も整える
私たちが摂取する米や小麦の穀物は、ほとんどの場合精白した状態で購入し、加工して調理します。全粒穀物は精白する前の穀物で、食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを豊富に含んでいます。腸内環境を整えるとともに、2型糖尿病の予防や、高血圧発症のリスクを下げる事がわかっています。玄米やオートミール、全粒パンなどを日常的に取り入れることが効果的です。
また、不飽和脂肪酸、ミネラル、ビタミン、食物繊維を含む豆類も脳梗塞予防に効果的です。実際にピーナッツを定期的に食べている人は、脳梗塞発症のリスクが低いという事が日本の研究で明らかになりました。
4. 緑茶やコーヒー1日1杯は脳梗塞のリスクを減らす
緑茶に含まれるカテキンは、ポリフェノールの一種でお茶の渋味成分です。カテキンには、食事中のコレステロールの吸収を抑え、排出を即す働きがあります。LDLコレステロールのみに作用するため、動脈硬化の予防となります。また、腸から糖の吸収を抑える役割があるため、血糖の上昇を抑えてくれます。
コーヒーを摂取する人は、しない人に比べると脳梗塞発症のリスクが低下するというデータがあります。詳しい事はまだわかっていませんが、抗酸化作用や血糖の低下、ストレスの軽減などが影響していると考えられます。これは緑茶にも同じ作用があるようです。1日の摂取目安としては、お茶でコップ2杯、コーヒーでカップ1杯がよいとされています。
食生活の乱れで若年化する脳梗塞
脳梗塞発症の平均年齢は、男性の方が高い傾向にありますが70代です。一方で、近年は50代以下の若年性の脳梗塞の割合が増えてきています。特に男性にその傾向が強くみられます。リハビリラボへ通院されている方も、50代以下が40%と多くなっています。そういった方に病気以前の食生活を伺うと、多くの方が暴飲暴食をしていたと回答されました。多忙やストレスによるコンビニ食、インスタント食が多く続いている、外食が多くなるなど、完全な塩分、脂質過多となっています。
前述したとおり1日の塩分摂取量の目安は、男性で7.5グラム、女性で6.5グラムです。カップラーメン一つで約5グラムの塩分量を含んでいます。これは男性の一日塩分目安量の約70%に及んでいます。高塩分食が高血圧の原因となり、高血圧を放置した結果、脳梗塞となるパターンが多くあります。
リハビリ+食習慣の見直しで脳梗塞の再発を防ぐ
脳梗塞は、遺伝的な要因はあるものの、正しい食生活で予防できる病気です。また、再発の防止という観点からも、食習慣は重要です。当施設では、脳梗塞後遺症患者さんを中心にリハビリを行っています。後遺症からの回復を目的としている他に、脳梗塞再発防止にも力を入れています。指導内容の一つに、食習慣の改善があります。これまで記述したとおり、どんなものを摂取してきたのか?これからどんなものを摂取していくべきなのか?といった部分は直接的に体に影響してきます。スタッフが個人個人に応じた適切な個別指導を行い、早期回復、再発防止へつなげていきます。
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この記事を書いた人
矢澤 大輔 鍼灸師
修士号(医科学)取得
業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。