脳梗塞最新医療① tPA静注療法
脳卒中は死因の第4位ですが最近ではtPA静注療法や脳卒中ケアユニット(SCU)が全国に普及し、脳梗塞の治療は日進月歩。
そこで今回は最新治療についてお話していきます。
脳梗塞では発症してから4.5時間以内、8時間以内の患者さんのみに行える特殊な治療法があります。
t-PA静注療法
t-PA(tissue-type plasminogen activator)という薬を入れて血栓を溶かし脳血流を良くします。症状が起こってから4.5時間以内に治療が開始できる患者さんだけが治療対象となります。
tPAはすべての脳梗塞の方に使えるわけではありません。その条件の代表的なものは以下のとおりです。
- 発症時間が特定されて、発症から4.5時間以内に投与開始できる場合
- 治療前のCT/MRI検査にて、脳梗塞の所見が全くないかごく軽微な場合
- 脳梗塞の症状が軽症から中等症ぐらいの場合
- tPA使用の禁忌となる血液検査の異常や、過去に重大な病気のない場合
- 脳卒中の専門医(脳神経外科医・神経内科医)の診断を受け、治療体制の整った施設であること。
次回は8時間以内の患者さんのみに行える特殊な治療法をお伝えしたいと思います。
脳梗塞最新医療② 血管内治療
脳血管に詰まった血栓を特殊なカテーテルを用いて、摘出する治療です。
閉塞している血栓を、メルシーリトリーバーというコイルに絡めて摘出したり、ペナンブラシステムという吸引器を用いて吸引します。
発症してから8時間以内に治療が開始できる患者さんのみが、治療の対象となります。
メルシーリトリーバーを用いた治療は2010年10月から、ペナンブラシステムを用いた治療は2011年10月から認められている、新しい治療法です。
いかがでしたでしょうか?tPA静注療法と血管内治療をご紹介させていただきました。
とはいえ。どこの病院でも受けられるわけではない。脳血管障害の治療は時間がすべて、できるだけ早く病院に行かないとすぐに手遅れになる。
適応時間が伸びたとはいえ4.5時間しかない。
「ちょっと調子悪いから早く寝るね」
などと言っている間にスパッと治療適応時間が過ぎてしまう。
たまたま早期に異変に気付き救急車を呼んでもtPA静注療法をしていない救急病院に運ばれたらそれだけで残念なことになってしまう。
脳血管障害の兆候が見られたらすぐさま病院に行かなければならない。そのためにはお家から近所の病院でtPA静注療法等の治療をしてくれる病院を日ごろから知っておく必要があります。
救急車に乗って〇〇病院に行ってください。と言えれば後遺症が残らない可能性が劇的にアップします。
転ばぬ先の杖ならぬ「脳梗塞になる前の病院選び」がとても重要なのです。
でもそんなことやってくれる病院なんて知らないよ。どこに行けばいいのさ。
そんな方も多いと思います。そこで今日は名古屋市のtPA静注療法をやっている病院を少し羅列してみたいと思います。
・名古屋大学医学部付属病院 昭和区 鶴舞駅
・名古屋市立大学病院 瑞穂区 桜山駅
・藤田医科大学ばんたね病院 中川区 尾頭橋駅
・名古屋市立東部医療センター 千種区 今池駅
・名古屋名古屋掖済会病院 中川区
・大隈病院 北区 大曽根駅
・中部ろうさい病院 港区 東海通駅
・中京病院 南区 道徳駅
・名古屋第一赤十字病院 中村区 中村日赤駅
・名古屋第二赤十字病院 昭和区 八事日赤駅
どうですかお家の近所にありましたか?病院に一度確認してくださいね。
パット見ただけでも一見さんお断り病院っぽいですよね。な・の・で。前もって診察券を作っておくことをお勧めします。
病気になった後なのでもう遅い。関係ない。とおっしゃられる患者様もおられると思いますが、脳血管障害は2回目・3回目と起こる可能性のある病気です。次に発症しないとも限りません。「備えあれば患いなし」です。
高血圧症や糖尿病といった基礎疾患をお持ちの人は名古屋市外の方も家の近所の病院でtPA静注療法をやっているところを前もって探しておく方が良いと思います。
脳梗塞最新医療③ボトックス治療
次はボトックス治療のお話です。結構前からやっているので最新感が少ないのは否めないですが、足かけ30年近く医療業界にいる私からすれば最近です。(笑)
疾患を問わず、上下肢の痙縮への保険適応が承認されたのは2010年10月からだそうです。
「脳卒中治療で凄い治療法が認可されたらしい」とリハビリ室で他の療法士たちと小躍りして喜んだものです。すぐにメーカーさんに来てもらって勉強会したのが昨日のことのようです。
もうあれから10年以上たつのか~。しみじみ。知らない間に年取るわけですね。は~。
さっ。気を取り直してボツリヌス菌君のお話です。
A型ボツリヌス毒素製剤は,骨格筋の神経筋接合部に作用し,神経終末でアセチルコリンの放出を抑制し,筋収縮を阻害することで痙縮を軽減させる治療法です。
脳卒中後の上下肢痙縮に対するボツリヌス療法は,「脳卒中治療ガイドライン 2009」以降, グレード A で推奨されています。
上肢痙縮に関しては,上腕,前腕および手指屈筋群へのボツリヌス毒素の注射は,痙縮の軽減,関節可動域の増加および日常生活上の介助量軽減に有効とされています。また、下肢痙縮に関しては下腿筋群へのボツリヌス毒素の注射は,痙縮の軽減に有効とされています。
しかし、ボツリヌス療法は脳卒中による麻痺自体を改善するものではありません。
理学療法,作業療法等の標準的治療の代替とはならず,これらの治療と併用して使用するよう明記されています。
脳卒中後の上下肢痙縮に対するボツリヌス療法 は,リハビリテーションと併用することで,痙縮のみならず,機能改善をもたらす可能性があります。
効果は約 3 カ月。その間にしっかりリハビリをしなければならないのです。
リハビリは嫌だけど注射だけ打って治るんだったらまぁ、打ってもいいよ。的な方は向いていない治療法と言えるでしょう。
ボトックス注射とリハビリは両方が合わさって初めて治療と言えます。注射を打った後のリハビリを頑張りましょう。
脳梗塞最新医療④ 幹細胞治療・再生治療
まさに最新。未知の治療法。なんだか魔法でもかけてもらえるんじゃないかって期待感がハンパない。ワクワク度100%ですね。
脳梗塞治療の有効と考えられる急性期治療はtPA静注療法が4.5時間以内。脳血管治療が8時間以内しか適応がない。それはもうお話しましたね。それだけ短時間の間に処置を受けられる患者さんなんて実際はそれほど多くありません。
ゆえに残念ながら多くの患者さんに後遺症が生じているというのが現状なのです。
急性処置可能時間を過ぎ一度損傷を受けた脳は再生しない。と言われてきましたが現在、脳神経組織を再生させる治療法、再生医療研究が進み期待度MAXです。
幹細胞を使った再生医療についても、いろいろな種類の幹細胞や投与方法で研究が進められています。保険適用を目的とした臨床試験(治験)がまさに今進められているところです。治験の結果としては今のところ脳梗塞の後遺症に対して一定の治療効果があるとされています保険適用での治療にはまだまだ時間がかかりそうです。
しかし保険は適応しませんがすでに厚労省から認可をもらって幹細胞治療を実際に始めておられる医療機関も続々と現れています。
スゴイですね。素晴らしい。
「幹細胞治療法とは」をダイジェスト版でお伝えしたいと思います。
幹細胞治療法
幹細胞にはホーミング作用があり損傷組織の修復を促す特性があります。幹細胞による脳血管障害治療では血管新生作用、脳血流改善、神経再生・保護などの機能回復が期待されます。
脊髄由来幹細胞
自分自身の骨髄幹細胞を採取・培養し、移植することで失われた身体機能を回復させる治療法。
脂肪由来幹細胞
患者様自身の脂肪から脂肪由来の幹細胞を採取・培養したのち静脈内点滴投与する治療法。
ご理解いただけたでしょうか?
今の医療では4.5時間や8時間を超えた脳梗塞は急性期リハやリハビリテーションで改善はみられるものの根本的な治療はできないと言われています。再生医療によって4.5時間や8時間を過ぎて何か月と経った患者さんでもまだまだ治療ができる。そんな可能性の扉が今まさに開かれたのです。凄い。再生医療はこれからもどんどん発展していくでしょう。胸膨らませて治験結果を追っていきたいと思います。
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