みなさんこんにちは。理学療法士の杉山です。
本日はリハビリロボット。特に、片麻痺のリハビリ時に使用する歩行ロボットについての紹介と説明・感想をさせていただきます。
現在、リハビリ・介護業界ではリハビリロボットが広がり始めています。特に片麻痺のリハビリではニーズがあり、様々な大学と会社様が共同開発を行っています。以前に比べリハビリロボットを選べる時代が近づいてきています。
実際、歩行支援リハビリロボットは私の知る限りで以下のものが世に出ています。
①HAL:ハル
②Welwalk:ウェルウォーク
③curara:クララ
④RE-Gait:リゲイト
⑤Orthobot:オルソボット
の5つです。
リハビリラボでは①〜④までは使用・体験をしたことがあり、⑤は近々試しに使用してみる予定となっています。
リハビリロボットの特徴
ここからは、それぞれの特徴を話していきます。
リハビリロボット①HAL:ハル
HAL®(Hybrid Assistive Limb®)は、
身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる、
世界初※の装着型サイボーグです。人が体を動かそうとすると、その運動意思に従って脳から
CYBERDYNE 「What’s HAL」
神経を通じて筋肉に信号が伝わり、その際、微弱な「生体
電位信号」が体表に漏れ出してきます。HAL®は、装着者の
「生体電位信号」を皮膚に貼ったセンサーで検出し、意思
に従った動作を実現します。
世界初の装着型サイボーグをコンセプトに様々なタイプのロボットが世に出されています。
「下肢タイプ」「単関節タイプ」「腰タイプ」が主のようです。
どのタイプも仕組みは同じで
1.脳で信号が発する
2.信号を受け取り、筋肉が動く
3.信号をH A Lが検出する
4.思いに従い、H A Lが動く
5.動作の情報がフィードバックされる
という仕組みになっています。
両側に着用することができ、片麻痺の方のみならず脊髄損傷の方にも使用することができます。
リハビリロボット②Welwalk:ウェルウォーク
藤田医科大学とトヨタ自動車が共同開発しました。
「すべての人に移動の自由を」をコンセプトに開発されています。
ウェルウォークは入院初期から使用することが可能ということが大きな特徴です。
トレッドミル(移動式の床装置、ウォーキングマシンみたいなもの)の上をリハビリロボットを着用して歩きます。その際に、上からハーネスでしっかり牽引することができるため、転倒するリスクが極めて小さいです。リハビリ業界では、発症初期から歩行量を確保することで回復が早くなると言う報告がされているため、とても理に適ったロボットになっています。
H A Lは利用者の脳からの信号を読み取りそれに合わせてロボットが動きますが、ウェルウォークはロボットが先行して動き、その動きに利用者が合わせて動くと言うものになっています。
リハビリロボット③curara:クララ
アシストモーション株式会社(信州大学のベンチャー企業)が開発されました。
「着るロボティックウェア」をコンセプトとしています。
クララの特徴は両側にロボットを使用する、片側にロボットを使用する、膝から上にだけロボットを使用するなど、利用者に合わせてカスタマイズできることです。
片麻痺専用のリハビリロボットというよりは加齢を含め、誰にも使える歩行支援ロボットとなっています。
こちらもロボットの動きに利用者が合わせる動かし方になっています(動かされる感じです)。
リハビリロボット④RE-Gait:リゲイト
広島大学と早稲田大学が共同開発されました。
こちらのロボットは足首のみをサポートするものになっています。そのため、歩行時につま先が引っかかりやすい方が主な対象の製品です。足首にフォーカスを置いたこともあり、軽量なロボットになっています。歩く際に膝折れが生じずにしっかり支えることができるなど、麻痺の程度は軽い人向けになっています。
こちらは荷重に合わせてロボットが動くシステムになっています。
リハビリロボット⑤Orthobot:オルソボット
京都大学が中心に佛教大学、京都工芸繊維大学、関西医科大学で共同開発されています。
こちらの製品は一般的な長下肢装具に装着するものとなっています。主に膝関節のアシストを行うロボットです。
将来的には、使用者自身が操作して自宅でも歩行訓練を行えるような製品を目指しているそうです。
リハビリロボットを使用してみた感想
①HAL:ハル
ロボケアセンターにお邪魔し体験をさせていただきました。
「単関節タイプ」「腰タイプ」「下肢タイプ」すべてを体験しました。どれも「動け」と信号を送るとロボットが動いてくれました。反復して行うことで動かし方を滑らかに覚えることができそうです。特に「単関節タイプ」「腰タイプ」はある程度使い方がわかれば、療法士がいなくても自宅で行えるロボットだと感じました。
一方で、「動け」と言う信号が届かない片麻痺や脊髄損傷の方には難しいロボットだと思います。
②Welwalk:ウェルウォーク
病院勤務時代に担当の患者様で使用していました。
自分で足を動かすことができない方に対してもウェルウォークが動かしてくれます。ロボットの動きに慣れるまでは恐怖心などがあり大変とのことですが、慣れてからはたくさん歩くことができていたみたいです。早期からの歩行距離を稼ぐロボットとしてはとてもいい製品だと感じました。
ただ、ウェルウォークは大掛かりなロボットであり、現状病院以外で取り扱っているリハビリ施設はほとんどないようです。エビデンスも病院(急性期や回復期)では上がっているようですが、維持期ではなかなか上がっていないため今後に期待しています。自費リハビリ施設で扱うには価格的にも製品のサイズ的にもなかなか難しそうだと感じます。
③curara:クララ
1週間のレンタルを試しました。
クララを使った感想は「軽い!」
これは我々セラピストも感じましたし、ご利用された方もおっしゃっていました。また、簡単に両下肢に着用できることも魅力的でした。多くの片麻痺の方は麻痺側が動かしにくくなりますが、実は非麻痺側も動かしにくいことが多々あります。そのため、両側ともにアシストしてくれることは有効的なケースもあると感じています。
上の二つと比べると付けやすい一方で、馬力は弱くなってしまいます。麻痺の程度は軽めの方に向いていると感じます。
④RE-Gait:リゲイト
1週間のレンタルを行いました。
足関節に特化したロボットであり、とても面白いなと感じました。足の裏のどこに体重が乗っているかをロボットが検知し、それに合わせて足首を動かしてくれました。つま先が引っかかる方に対しては効果的です。麻痺が重い方には難しいロボットでした。たくさん歩ける方には積極的に使ってみたいものです。
⑤Orthobot:オルソボット
今度こちらも試しに使ってみる予定です。まだどのようなものかは詳しくはわかりませんが、膝に着目したロボット。大変楽しみです。
まとめ
ロボットを利用したリハビリのメリットは、どのセラピストが行ってもある程度同じ効果が出せることです。つまり、セラピストの技術力に左右されず安定した効果を発揮することができます。例えば、1年目のセラピストでも10年目のセラピストと比べて小さな差はあれど、平均以上の効果を期待できます。このメリットから、実はセラピストではない方でも使う施設はあります。デイサービスなどで取り入れている施設も多いようです。
ゆくゆくは利用者の方自身で装着し使いこなせる将来が来るかもしれません。
私はセラピストはセラピストにしかできないことを行うことに重きを置いています。
ただ、そうは言っても、利用者の方々が今より一歩でも半歩でも前に進むことができ、自分の可能性に気づくことができたら非常に嬉しいのです。その一つにロボットがあるのであれば積極的にロボットの使用を検討しています。
「セラピストの技術」×「ロボットの安定した効果」
まだまだ新しい可能性を開けそうです。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
ご予約はお早めに!
この記事を書いた人
杉山 一輝理学療法士
JBITA公認 成人片麻痺基礎講習会修了/川平法 入門編講習会修了
大学卒業後 リハビリ専門病院に入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。経験年数で評価されやすい業種だからこそ、新人時代から技術の質と学ぶ密度にこだわってきました。院内で積極的に勉強会を開き先輩・後輩関係なく、学んだ技術・知識を伝達しました。2021年 ハート脳梗塞リハビリ・ラボに入職。「リハビリ難民」の方々、特に「麻痺を良くしたい」「今のリハビリでは物足りない」と思っている方々に満足いただけるサービスを提供できるように全力を尽くします。