キレイに歩くための準備運動
−立ち上がり−
皆様こんにちは。理学療法士の松浦です。
今日は愛知県は雪が降り、ここ名古屋丸の内ではたくさん雪が積もっております。
雪が降った夜や翌日は路面が凍って滑りやすくなっています。
外に出る際はいつも以上に注意しながら歩いてくださいね。
![](http://rehabili-lab-jp.check-xbiz.jp//wp-content/uploads/2022/11/42a0248faaf4d7d68af9e9955b2bd4c2_t.jpeg)
さて、今回は「キレイに歩くための準備運動」について解説していこうと思います。
中でも自宅で簡単にできる「立ち上がり」の運動について書いていくので、歩く前にぜひ準備運動として行ってみてください。
目次
立ち上がり
椅子から立ち上がる、または着座するという動作は脚で体重を支えながら狭い支持基底面の中で身体重心を大きく上下に移動させる動作でもあり、姿勢制御の観点からも難易度の高い動作といえる。(※1)
※1出典
石井慎一郎著「動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践」P.122
日常生活の中で様々な場面で使う動きになってきます。
歩く前にも必ずと言っていいほど立ち上がる動作が入ってきますので、歩行の前の準備運動として取り入れていきましょう。
歩行に必要なこと
歩く際に大切なことは様々です。
中でも今回の立ち上がりで強化できる部分に対して解説をしていきます。
藤澤らの文献によると、脳卒中片麻痺の歩行能力を高めるためには、麻痺側片脚立位保持能力を向上する必要がある(※2)と言われており、鈴木らの文献では立位バランスと膝伸展能力(※3)と言われています。
様々な文献をまとめると、麻痺側下肢の膝伸展筋力とバランス能力を身につけることで歩行能力が向上すると言われています。
※2出典
藤澤宏幸,武田涼子,前田里美・他:「脳卒中片麻痺患者におけるFunctional Reach Testと片脚立位保持時間の測定の意義 ─歩行能力との関係に着目して」理学療法学,2005,32(7): 416-422.
※3出典
鈴木堅二,中村隆一,山田嘉明・他:「脳卒中片麻痺患者の最 大歩行速度と立位バランス」リハ医学,1992,29(7):577-580.
立位バランス
Meng Limらの文献では、麻痺側を引いた状態で立ち上がりトレーニングを30分間、週5回行い、4週間続けたことで立位バランスの向上を認めたと言われています。(※4)
麻痺側への荷重は一般的に減少しやすいと言われており、麻痺側に荷重をかけることで筋力増強と荷重感覚の強化を行います。
普段の立ち上がりの際には、非麻痺側の足を引いた状態で立つ方が多くいます。
自分も当てはまる!
という方は今日から行ってみましょう。
※4出典
Meng L, Jin C, Wenxiang F, et al.: Effects of modified sit-to-stand training on balance control in hemiplegic stroke patients: a randomized controlled trial. Chinical Rehabilitation, 2015, Volume 30, lssue 7.
立ち上がりは
麻痺側の足を引いて立つ
とても難しい運動になります。通常に比べて筋力も落ちているので、初めて行う方は注意して行いましょう。
やりやすくするコツとしては、「座面を高くして行う」です。
座面を高くすることで、お尻があげやすく、足に体重をかけやすくなったりします。
まずは簡単にできる高さから練習し、徐々に普段使っている椅子の高さに変更していくようにすると良いでしょう。
ここからは立ち上がりについて詳しく解説します。
3相構造
立ち上がり動作は3相に大きく分けられます。
- 1相:重心の前方移動
- 2相:臀部の離床期
- 3相:重心の上方移動期
重心の前方移動期
第1相は座っている状態からお尻が浮くまでの時間を指します。
身体を前方に移動させるための運動です。
骨盤が前に倒れていく(骨盤前傾する)事で引き起こされます。
ここでのポイントは、「背骨は曲げず、猫背にならない」ということです。
![](http://rehabili-lab-jp.check-xbiz.jp//wp-content/uploads/2022/12/1d6d51cb027f7ce28b65347a854e146f.jpeg)
臀部離床期
第2相は臀部離床から足首が最大背屈位になるまでの時間を指します。
お尻の体重が前方へ移動し臀部が浮く際に、膝がわずかに前方へ移動します。
その際に足首が曲がります。
臀部が浮くとさらに足首は背屈して、この時最大背屈位になります。
ここでのポイントは、「体重をお尻から足に乗せる」と言う事です。
![](http://rehabili-lab-jp.check-xbiz.jp//wp-content/uploads/2022/12/dfd597c8da006d0edaa10ca7aa482461.jpeg)
重心の上方移動期
第3相は足首の最大背屈位から身体を起こしてくる時間を指します。
臀部が浮いて体重が足に移動したら、膝や股関節、身体を連動させて伸ばしてきます。
重心が足から外れないように調節しながら行います。
ここでのポイントは、「足の裏全体で床を押す」と言う事です。
![](http://rehabili-lab-jp.check-xbiz.jp//wp-content/uploads/2022/12/bc305aa0c6888f1cbe3661e39c5c78a3.jpeg)
各相のポイントが難しい
立ち上がりを行った際にみなさん思われることが「ポイントが難しい」だと思います。
病院やデイサービスなどで1回は耳にしたのではないでしょうか。
背骨は曲げず、猫背にならない
これはよく言われることかもしれません。
立ち上がる前に猫背になってしまうことで、身体の重心が後方にずれやすくなります。
本来、前方へ移動させるはずの重心を後方へ移動させてしまっては立ち上がることはできません。
また、猫背になってしまう方の特徴として足元を見てしまうことです。
足元を見る時は自然と背中も曲がってきてしまいますので、やや前方を見るようにしましょう。
自主トレの際は目標物を決めておくと、目線がズレたかどうかを確認できますので、お試しあれ!
体重をお尻から足に乗せる
これは多くの人が難しいポイントでもあります。
多くの人は足首が硬く前方へ重心移動させるのが難しい方が多いです。
装具を履いている方は種類や設定にもよりますが、特に難しいポイントにもなります。
そういった方はお尻の下にクッションや台をかませて、座面を高くした場所から立ち上がることで練習ができます。
踵が浮かないように行うことで足首のストレッチにも繋がるため、アキレス腱やふくらはぎが張るような感じがしているとしっかり行えている証拠です。
足の裏全体で押す
これも多くの人が難しいポイントになります。
お尻が浮いた後の動作になりますが、体重を足に載せることができていないと、そもそもこの動作が難しくなってしまいます。
立ち上がろうとしたけど、後ろに倒れそうになりベッドに勢いよく尻もちをついた。
こんな経験はありますか。
これは足の裏全体で押せているのではなく、踵やつま先のみで押してしまうと起きてしまいます。
また、体重がかかる場所も踵やつま先のどちらかに寄り過ぎているとうまくできません。
全体に均等に体重がかかってくるようにまずは座面を高くした状態で練習してみましょう。
まとめ
さて、今回のまとめを行っていきます。
まずは、歩行をするためには「立位バランス能力」と「麻痺側の筋力強化」です。
そのためには、「麻痺側を引いた状態で立ち上がりをする」ことで麻痺側の足の筋力増強とバランス能力の向上が狙えます。
また、通常の椅子で難しい人は座面を高くしたり、ベッドの高さを高めにしたところから行うことで、立ちやすくなります。
研究では30分を週5回行い、4週間続けることで立位バランス能力が向上すると言われているため、毎日コツコツと頑張って「キレイに歩く」を実現させましょう!
簡単に行えるように動画で解説したものもございます。ぜひ活用してみてください。
→https://youtu.be/9nmnUwqdhv8
1人では難しい方はお試しコースでも一緒にリハビリをしながら、身体の動きを改善できますのでご連絡ください。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
ご予約はお早めに!