脳梗塞でよく使う鍼灸のツボ7穴を紹介します

2023.03.14

「脳梗塞に鍼灸を行うと効果がある。」と聞いたことはありますか?

また、効果があるなら自分もやってみたいと思っている方も多いと思います。

鍼灸は、脳梗塞後遺症に効果があるとWHO(世界保健機構)からも認められています。

今回は、施術歴20年の鍼灸師が、脳梗塞専門リハビリ施設で行う鍼灸治療でよく使っているツボを7つ紹介します。

自分で押すことができるツボもありますので、指などで押したり、揉んだりしてみてくださいね。

鍼灸治療は脳梗塞に対して何ができるの?

脳梗塞の鍼灸治療と言われても、何を目的としているのか疑問を持っている方もいます。

私が考えている、または狙っている鍼灸治療の効果は以下の4つになります。

① 痙縮の軽減

脳梗塞後遺症において、筋肉の緊張が強くなりすぎることを痙縮といいます。鍼灸治療はそういった異常緊張を和らげる目的があります。近年はボトックス(ボツリヌストキシン)注射を行い、筋緊張を起こしている神経の働きを抑えるという方法がとられるようになりました。鍼灸刺激でも同じような効果を狙っています。

② 筋硬結の軽減

痙縮による筋緊張で動作困難となると、それに伴う筋緊張を二次的に起こしてしまいます。それがまた動作悪化につながるという悪循環が起きます

例)上肢の筋肉が痙縮を起こすと、背中から体幹の筋肉までが硬くなり、更に動かしずらい状態になってしまいます。

筋緊張軽減させることは、運動療法におけるリハビリの効果を上げる狙いがあります。

③ 関節可動域の回復

痙縮が強くなると、関節が動かしづらくなる拘縮につながっていきます。その場合、関節自体が固まってしまうことも多くなります。鍼灸を行うことで関節可動域を回復させていきます。

④ 血流改善による神経伝達の促通

脳梗塞によって、脳からの神経伝達がうまく伝わらなくなると、動かない動かしづらいといった機能障害、痛みシビレといった感覚異常を引き起こします。鍼で血流改善をすることで神経の働きを良くさせていきます。また、末梢神経に直接刺激を加えて、神経促通を行うやり方もあります。実際に、発症から数年経過し対するも、痺れが消えた、弱くなったという例を経験しています。

脳梗塞の鍼灸治療は、脳梗塞に伴う後遺症に対する治療がメインとなっています。

ツボの紹介

手三里(てさんり)

手三里

肘を曲げた時、親指側にできるしわの先端が曲池というツボになります。手三里は曲池から指三本分下に向かったところにあります。手の症状全般の方に使用します。押さえると手の甲の辺まで響く感じがあります。私は経験的に、従来の手三里より少し内側を使用します。橈骨神経という指を伸ばす時に関係する神経に当たりやすくなります。電気を流すと指の伸展運動が再現できます。

指間穴(しかんけつ)

指間穴

指間穴は言葉の通り指の間のツボです。八邪穴とも言われる脳梗塞定番のツボで、いわゆる水かきの場所にあります。私が使用するのはそれよりも少し下の赤丸のところになります。専門的に言うと中手骨体の間です。おさえると、ジワリと響く感覚が指先まで届きます。また、第1指と第2指の間は有名な合谷というツボになります。

足三里(あしさんり)

足三里

足三里は、スネを指で上に向かってさすっていき、骨のふくらみで指がとまったらその横にとります。ツボの中でもトップ3に入る有名なツボです。足三里の部分には、前脛骨筋といって足関節を上にあげる(背屈)筋肉があります。歩行時の足関節背屈は麻痺のある方にとってとても重要です。さらに奥に進めると、後脛骨筋という筋肉があります。この筋肉は足関節のうち返し(内反)と関連しているので、鍼をする際には深く刺入させて後脛骨筋まで到達させる時があります。

承山(しょうざん)

承山

承山は膝裏からかかとまでの間の中間にあります。足関節を下に向ける(底屈)筋肉である下腿三頭筋があります。麻痺によって足関節の足尖(つま先が下を向いてしまう)や内反が起きている方は、下腿三頭筋が痙縮していることがあります。承山だけでなく、アキレス腱まで(青線)を刺激しながら足関節の運動を繰り返すと筋肉が緩んでくれます。

腎兪(じんゆ)

腎兪

腎兪は腰にあるツボです。腰骨の2番目の高さにあります。ウエストライン(くびれ)を自分でつかんだ際に親指が当たる位置が腎兪に相当します。東洋医学の考え方の中で、腎を調整するツボです。※今現在知られている内臓の腎臓とは考え方が異なります。脳梗塞に関係が深い病態の一つが高血圧です。高血圧と腎は深く関係しており、腎機能低下が高血圧の原因にもなります。体質改善を目的として腎兪を使用することがあります。

腸骨筋(ちょうこつきん)

腸骨筋

腸骨筋は鼠径部の奥で触れることができます。股関節の屈曲(ふとももを上げる動作)に重要な筋肉になります。歩行時の振り出しが苦手、力が入らない時など、腸骨筋が固まっていることがあります。硬さを取り除くことで足が出やすくなるケースがあります。また、慢性的な腰痛をお持ちの方は重要な治療点になります。

運動区(うんどうく)感覚区(かんかくく)

運動区 感覚区

運動区、感覚区は中国の頭皮鍼療法(頭に鍼を刺す)を参考にしています。ややこしいですが詳しく説明します。場所は、眉間から外後頭隆起まで頭をぐるっと半周した正中線の中点から、もみあげの上のあたりの髪の生え際に線を引きます。これが運動区です。上1/5が下肢。中2/5が上肢。下の2/5が顔の運動に関連します。そこから1,5センチ後ろに平行に引いた線が感覚区です。上1/5が下肢、頭、胴体。中2/5が上肢、下2/5が顔面の感覚に関連します。脳梗塞治療で頭に鍼をすることは基本です。刺しながら運動したりすることもあります。損傷している側の頭だけでなく、両側刺激を行った方が効果が良さそうです。

おわりに

今回は脳梗塞に対する鍼灸治療で、よく使うツボを7つ紹介しました。

手三里指間穴足三里承山腎兪腸骨筋、運動区感覚区

指で押す、ツボ押し効果もありますので、気になる方は自分で押してみてください。

ポイントは、押した際に周りに鈍痛感覚(ひびく感覚)が出る事です。

少し難しい用語が出てしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。