脳梗塞の後遺症について解説

2024.08.08
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 日本では、1年で約29万人の方が脳卒中を発症しています。※1そのうち約73%が脳梗塞とされているため、約21万人が1年間で脳梗塞になっています。よって、後遺症に悩まされる人々も少なくありません。この記事では、脳梗塞の後遺症について、その症状、原因、そして改善方法を詳しく解説します。脳梗塞の影響を最小限に抑えるためには、早期の対応と適切なリハビリが不可欠です。本記事を読むことで、脳梗塞の後遺症に関する知識を深め、効果的な改善方法を見つける手助けとなるでしょう。

※1 日本脳卒中データバン

脳梗塞とは

 脳梗塞は、脳の血管が詰まり、血流が途絶えることによって脳組織が損傷する病気です。脳の特定の部位が血液供給を受けられなくなると、その部位の機能が失われ、さまざまな後遺症が発生します。脳梗塞は高血圧、糖尿病、喫煙などの生活習慣病と深く関連しています。生活習慣の見直しによる予防はもちろんのこと、早期発見と治療が重要です。

脳梗塞についての過去の記事はこちら

Ⅰ.脳梗塞シリーズ  脳梗塞について

脳梗塞の後遺症の概要と原因

 脳梗塞の後遺症は、多岐にわたる症状を引き起こします。これらの後遺症は、発症後のリハビリや生活の質に大きな影響を与えてしまうため理解が必要です。後遺症の種類や程度は、脳梗塞の部位や、損傷した範囲によって異なってきます。例えば、好発部位である中大脳動脈が梗塞されると、大脳の前頭葉に障害がおきます。後遺症として、前頭葉の働きである運動や思考能力の低下がみられます。

 脳梗塞の後遺症の原因は、脳の血流が途絶えたことによる脳細胞の損傷にあります。血流が遮断されると、酸素や栄養が供給されなくなり、脳細胞が損傷します。脳は非常に酸素依存性の高い臓器です。そのため、酸素供給が途絶えると、わずか数分で脳細胞が損傷し始めます。この損傷が不可逆的になると、その部位が担当する機能が失われ、後遺症として現れます。

脳梗塞の後遺症の症状

 脳の各部分は異なる機能を担当しています。例えば、前頭葉は運動機能や意思決定を司り、側頭葉は言語や記憶を司ります。脳梗塞が発生した部位に応じて、以下のような後遺症が発生します。

 脳梗塞の後遺症には、以下のような症状が見られます。

①運動障害

 脳梗塞の後遺症として最も一般的なのが、運動障害です。片側の手足が動かしにくくなる片麻痺や、筋肉が異常に興奮してしまい、硬直した状態になる痙縮が良く知られています。また、協調的な運動ができなくなる失調や、歩行バランスが悪くなることも運動障害にあたります。

②言語障害

 言語障害も脳梗塞の後遺症として頻繁に見られます。言葉が出にくくなる失語症や、発音が難しくなる構音障害などがあります。多くの方は左脳に言語中枢があります。左の脳が梗塞して右半身麻痺になると、言語の障害が出現しやすくなります。これらの障害は、専門の言語聴覚士による訓練が必要です。

③感覚障害

 感覚障害も脳梗塞の後遺症として現れることがあります。触覚や痛覚、温冷覚がわからなくなることがあります。位置覚が障害されると、目を閉じた状態で自分の手足がどこにあるのかわからなくなってしまいます。これらの感覚障害は、リハビリテーションによってある程度の改善が見込まれます。位置覚が鈍くなると、感覚の練習は、運動練習と並行して行う事が多くなります。そこで、いろいろな刺激を入力することで回復を図ります。

④認知障害

 脳梗塞の後遺症として認知障害が現れることもあります。とくに、記憶力の低下や、注意力の散漫などがおきます。物ごとを順序だてて行動することが難しくなる遂行機能障害もその一つです。認知障害は高次脳障害に分類され、日常生活や社会活動に支障がでてしまう後遺症となることがあります。

脳梗塞後遺症の改善方法

 脳梗塞の後遺症を改善するためには、以下のような方法があります。

①リハビリテーション

 リハビリテーション(運動療法)は、脳梗塞の後遺症を改善するための基本的な方法です。理学療法士や作業療法士による訓練を通じて、運動機能や日常生活動作の回復を図ります。発症から6か月を経過してしまうと、身体の変化は無いと言われていました。しかし、定期的なリハビリテーションは後遺症の改善に有効な事がわかってきました。

②言語療法

 言語障害を改善するための専門的な訓練が言語療法です。言語聴覚士による個別の訓練を受けることで、コミュニケーション能力の回復を図ります。特に失語症や構音障害に対して効果的です。

③薬物療法

薬物療法も脳梗塞の後遺症改善に役立ちます。特に認知障害に対しては、記憶力を改善する薬剤や、注意力を高める薬剤が使用されます。また、高血圧、脂質異常症、高血糖など、脳梗塞発症のリスクが高まる血管系の数値を正常値に保つために薬を処方されています。これは再発防止にむけて非常に重要です。医師の指導のもと、適切な薬物療法を受けることが重要です。

④心理療法

 心理療法は、精神的な後遺症を改善するための方法です。ある研究によると、脳卒中後にうつ病になる発症率は、小さいものを含めると40%に及ぶと言われています。うつ病の改善は、ADL、認知機能、生存率の改善と関係しています。お薬の処方、運動療法、認知行動療法など適切なケアが求められます。

リハビリに関して

 リハビリラボで、脳梗塞の後遺症の方に提供しているのは、理学療法士による運動療法と、鍼灸師によるはり治療です。

 はり治療を担当している筆者の意見としては、運動器系の脳梗塞リハビリには、自動運動が必須であるという事です。自動運動とは、自分の意思によって筋肉を収縮させて関節を動かす動作です。逆に他人の力だけで関節を動かす動作は、他動運動といいます。

 私が担当するはり治療によって、「麻痺している身体が動かしやすくなった。」「動くようになった。」という症例を経験してきました。しかし、脳梗塞のリハビリは、動くようになることが目的ではありません。そこから生活に使えるような身体にすることが、脳梗塞のリハビリのゴールです。そのためには、自分で動かし、動作を達成させる運動療法のリハビリが必要です。療法士は、動作を獲得するために必要な筋肉の動き、骨の位置、姿勢等を複合的に分析し、リハビリに反映させていきます。ゆえに、脳梗塞のリハビリは特に専門性を必要としています。

 はりで動きを良くしてから、リハビリで体を動かす。はり治療と療法士によるリハビリの愛称は非常に良いと感じています。

まとめ

 脳卒中における脳梗塞の発症率は上昇の一途をたどっています。脳梗塞の後遺症は、生活の質に大きな影響を与える深刻な問題です。しかし、適切なリハビリテーションや治療を受けることで、後遺症の改善が期待できます。発症から6か月が回復のピークといわれてきましたが、私達の経験上からもそうではないと感じています。早期の対応もそうですが、継続的なリハビリテーションが、脳梗塞の後遺症を克服するための鍵となります。脳梗塞の予防と治療に努め、健康な生活を送るための一歩を踏み出しましょう。

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この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。

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