脳梗塞のリハビリを行った後に、体が痛くなる、だるくなるといった症状が現れる事があります。
いわゆる「筋肉痛」になりますが、これはどういう体のサインなのでしょうか。この記事では筋肉痛について解説するとともに、筋肉痛は必要なものなのかどうかお伝えします。簡単な内容になっていますので最後までお付き合いください。
筋肉痛とは
筋肉痛とは「遅発性筋肉痛」と呼ばれ、運動後数時間から数日後に生じる筋肉の痛みです。慣れない運動をした後や、いつも以上に激しい運動を行った後、少し時間をおいて現れる筋肉の痛みです。
実は筋肉痛の詳しいメカニズムはわかっていません。一昔前は、運動した際に生じる疲労物質の「乳酸」が筋肉にたまることで痛みを発症していると言われていました。しかし、乳酸は運動の際に出現する代謝産物で、動きのエネルギーにも使われていることがわかりました。ですから、乳酸が筋肉痛の原因とは言えなくなりました。
現在は、運動による筋肉の炎症を修復する過程で起きる痛みという説が有力となっています。
筋肉痛の原因(有力説)
筋肉を構成している最小単位を筋線維とします。
① 不慣れな動きや、いつも以上に激しい運動を行うと、筋線維が損傷します。
② 損傷した筋線維では炎症が起きます。修復する過程で白血球が出現します。
③ それに伴い、発痛物質であるセロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン等が産生されます。
④ 筋線維には痛みの受容体が無いので、筋膜等が刺激され、感覚中枢を介して痛みとして認識されます。
歳をとると筋肉痛の発生が遅くなるってほんと?
「若くないから筋肉痛が2日後に来る。」年上の人が若者に話す、このような会話を聞いたことがある人はいますでしょうか?
若者は神経が敏感なので筋肉痛が早く出現するが、年齢を重ねると神経が鈍感となり、筋肉痛を感じるのが遅くなるという内容です。本当なの?と思うかもしれません。しかし、この内容に関して科学的根拠は全くありません。むしろ、同じ運動をした際に出現する筋肉痛に、年齢による時間差は認められないという報告があるほどです。ですから表題のような内容は都市伝説ということになります。
私は少し影響していると考えてます。中高齢者と若年者の間では基本的に、基礎筋力と一日の行動量に違いがあります。こういった基礎体力的な部分が痛みの出現スピードに影響を与えているのではないかなと思っていますが、仮説にしかすぎません。
筋肉痛になりやすいのは山上り?それとも山下り?
坂の上りと下りを想像してみて下さい。一般的に上りは「つらい」下りは「らく」というイメージがあります。筋肉にとってはどうなのでしょうか?
筋肉の収縮の仕方には大きく分けて以下の3つが存在します。
短縮性収縮…筋肉が縮みながら力が出る。 力こぶを作る。物を持ち上げる 山をのぼる
伸張性収縮…筋肉が伸びながら力が出る。 物をゆっくり降ろす 山を下る
等張性収縮…筋肉の長さが同じ状態で力が出る。腕相撲 空気いす
この中で、筋肉が伸ばされながら力を発揮する、伸張性収縮が一番筋肉の損傷が起こります。
よって、筋肉痛が起きやすいのは山のぼりではなく、山を下るときです。山を下る際、筋肉はブレーキをかけながら使用されます。特に大腿四頭筋と下腿三頭筋は伸張性収縮が働くので、下山時に筋肉痛になりやすい部位になります。
お正月の名物行事の箱根駅伝。5区と6区は山のぼり、山下りです。選手は平地を走る選手とは違う筋肉の鍛え方をしているのが想像つきますね。
運動後、筋肉痛があった方が良いのか?
最後に読んでくださった方に一番伝えたいメッセージです。ラボにおける、脳梗塞リハビリを体験した後に、「体がだるくなる、痛くなる」「関節が痛む」などの症状をお伝えしてくれ方がいらっしゃいます。
これは一種の筋肉痛になります。普段行っていない動作を行うことで、一時的に筋肉の炎症が起きます。これはトレーニングには必要な事です。筋肉を強くするためには、一度筋肉を壊し、それが修復されることで以前よりも筋肉が強くなります。筋肉痛は筋肉を強くするための必要な過程になります。
過度なリハビリは良くありませんが、適度なリハビリによってできた筋肉の痛みは前向きにとらえてください。そういった場合は良いリハビリができたと自分を褒めてあげるといいですね。
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この記事を書いた人
矢澤 大輔 鍼灸師
修士号(医科学)取得
業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。