近年、日本では高齢化が進む中で脳梗塞患者の増加が顕著です。
その中でも、「めまい」や「ふらつき」は、脳梗塞の前兆や後遺症として多くの患者に見られる症状です。
厚生労働省の調査によれば、日本で毎年約27万人が脳卒中を新たに発症、または再発しており、そのうち脳梗塞が大半を占めています。※
本記事では、脳梗塞によるめまいの原因やメカニズム、経過について詳しく解説し、適切な対応方法をご紹介します。
※国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「脳卒中の予後(死亡率)と脳卒中専門医師数の関係について -ビックデータを用いて初めて可視化に成功-」
脳梗塞によるめまいのメカニズム
脳梗塞とは
脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、脳の一部に酸素や栄養が届かなくなる病気です。
この結果、脳細胞が損傷を受け、さまざまな神経症状が現れます。
めまいは、この神経症状の一つとしてよく知られています。
脳梗塞について簡単にまとめた記事はこちらから
めまい発生のメカニズム
脳梗塞によるめまいの主な原因は、次の2つに分類されます。
⒈ 小脳の障害
小脳は身体のバランスを保つ役割を担っています。小脳やその周辺部が脳梗塞によって損傷を受けると、バランス感覚が失われ、回転性めまいやふらつきが生じます。
⒉ 内耳の血流障害
脳梗塞が内耳への血流を妨げると、平衡感覚を司る前庭神経が正常に機能しなくなります。これにより、患者はめまいを感じることがあります。
めまいの種類
脳梗塞によるめまいには以下のような種類があります。
- ・回転性めまい:目の前がぐるぐると回るような感覚。
- ・浮遊性めまい:足元がふわふわしているように感じる。
- ・平衡機能障害:バランスを調整する機能が障害され、動くとすぐに倒れてしまう。
脳梗塞によるめまいの経過と症状の変化
発症直後のめまい
脳梗塞発症直後には、回転性めまいや重度のふらつきが頻繁に見られます。
この段階では、患者は自力で立ち上がることが困難であり、医療機関での迅速な対応が必要です。
数日後からの症状変化
発症後数日経過すると、回転性めまいは軽減する場合がありますが、平衡感覚障害や軽度のふらつきが残ることがあります。
この段階では、リハビリテーションが重要です。
長期的な影響
長期的には、平衡感覚の改善が見られる一方で、一部の患者では後遺症として軽いふらつきが残ることがあります。
これにより日常生活で転倒のリスクが高まるため、継続的なリハビリが推奨されます。
脳梗塞によるめまいへの対応方法
医療的対応
- 迅速な診断と治療:発症直後は、MRIやCTスキャンによる早期診断が不可欠です。適切な血栓溶解療法や血行再建治療が行われます。
- 薬物療法:アスピリンや抗凝固薬を使用することで、脳梗塞再発リスクを軽減します。めまいに対しては原因を評価して症状に合わせたお薬が選択されます。
リハビリテーション
- 平衡感覚トレーニング:理学療法士によるバランス練習が有効です。並行棒やバランスボールを使用して、安定性を向上させます。
- 日常動作訓練:歩行練習や立ち上がり動作の訓練を通じて、ふらつきを軽減します。
自宅でできる対策
- 安全対策の徹底:転倒防止のため、手すりの配置や床の段差をなくす工夫が必要です。
- 生活習慣の改善:規則正しい食生活や適度な運動を心がけ、最初のリスクを軽減します。
- 安全な運動:転倒してしまうからと寝てばかりでは悪化してしまいます。手すりや壁、机など安定して掴まれる場所で運動することが大切です。
脳梗塞のめまいに関するよくある質問
Q1:めまいが続く場合、どうすれば良いですか?
A1:めまいが続く場合は、早めに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが重要です。
Q2:めまいの症状は完全に治りますか?
A2:早期治療と適切なリハビリテーションにより、多くの場合、症状は改善します。ただし、一部の患者では軽度の後遺症が残ることがあります。
リハビリ・ラボでの治療と改善事例
リハビリ・ラボでの治療
鍼治療では、血行が悪くなっている部分の血流改善を行っていきます。
首周りの筋肉が硬くなる事で、脳への血流を阻害してしまうため、特に首の後ろも治療していきます。
リハビリではめまいの原因である小脳や内耳、平衡感覚を司る前庭系へのトレーニングを行っています。
身体のバランスの要である体幹(腹筋や背筋)の筋肉をつけることで、バランス能力の強化も行います。
改善事例
脳梗塞を発症し、ふらつきが強かった利用者様への治療場面とその効果を紹介しております。
まとめ
脳梗塞によるめまいは、小脳や内耳の障害によって引き起こされることが多い症状です。
発症直後の適切な治療と長期的なリハビリテーションを通じて、症状の改善と再発予防が期待できます。
日常生活での安全対策や生活習慣の見直しも重要です。
早めの対応と継続的なケアで、より良い生活を目指しましょう。
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この記事を書いた人
松浦 一将 理学療法士
JBITA公認 成人片麻痺基礎講習前講習1、2修了
大学卒業後、回復期リハビリ病院へ入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。同病院で訪問リハビリも経験させて頂き、より患者様の「生活」に近い場所でリハビリに携わってきました。2022年ハート脳梗塞リハビリ・ラボへ入職。「麻痺をよくしたい」という方はもちろん、前職の経験も活かし、目標に向けた最適な自主トレや運動方法のご提案、情報提供も行っています。 皆様の何気ない「笑顔」を大切に、目標を達成して共に成長できるよう全力でサポートさせて頂きます。