お家で出来る半側空間無視リハビリは?

2023.11.11

半側空間無視(以下無視)とは、脳の障害によって生じる異常症状の1つです。

この記事では、無視の特徴とリハビリ方法について詳しく説明し、最後にはお家で出来るリハビリについて解説していきます。

半側空間無視とは

Heilmanらによると「大脳半球損傷の反対側に提示された刺激を報告したり、刺激に反応したり、与えられた刺激を定位することの障害」と定義されている。

簡単に言うと麻痺した側へ注意を向けたり、反応したりしにくくなる障害です。

無視の特徴

無視の特徴としては注意を向けられないことが特徴です。視野が半分見えなくなってしまう半盲(はんもう)とは異なるため、注意が必要です。

また、無視が出現する割合は右半球損傷(右脳)の患者に多いとされており、下に紹介するような症状が見られます。

無視の症状

よくみられる症状として、以下の4つが挙げられます。

⒈無視側のものに良くぶつかる

歩行中や車椅子での移動中に麻痺した側の壁や家具などにぶつかることがあります。

⒉食事で無視側のものを残す

食事中に麻痺側のものを見落として残してしまったり、ご飯は置いてあるのに「ご飯が少ない」や「ご飯が無い」などの発言が見られます。

⒊道に迷う

無視側の道が認識されないため、同じ場所をぐるぐるしてしまったり、目的地が無視側にあると到達できないことがあります。

⒋無視側の身なりを整えない

無視では、自分の身体の半分も認識することができなくなることもあります。

その場合は無視側の服を着なかったり、髭を半分だけ剃ったり、身体が大きく傾いていても気にしないなどの症状が現れます。

無視のリハビリ方法

無視は脳損傷が起きてから約10日間で急速に回復し、3ヶ月で大半が無視の症状が消失すると言われています。⑴,⑵


Umarova RM, Nitschke K, Kaller CP, Klöppel S, Beume L, Mader I, et al. Predictors and signatures of recovery from neglect in acute stroke. Ann Neurol. 2016 Apr. 79 (4):673-86.

Ringman JM, Saver JL, Woolson RF, Clarke WR, Adams HP. Frequency, risk factors, anatomy, and course of unilateral neglect in an acute stroke cohort. Neurology. 2004 Aug 10. 63 (3):468-74.

その間に無視に対するリハビリと、身体機能を向上させるリハビリを行うことで退院後の生活のしやすさが変化してきます。

⒈病態を総合的に評価し改善していく

半側空間無視の根本的な治療も、もちろん大切ですが生活環境や運動機能、感覚機能などの評価を元に、治療を進めていくことが大切です。

無視側のものにぶつかる場合は麻痺側の感覚がないことも原因の1つです。

そのため、起きている現象が何が原因で起きているのかをしっかりと評価することで症状を改善することが可能です。

⒉反復性経頭蓋刺激(Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation:rTMS)

rTMSと呼ばれる経頭蓋刺激法は、コイルを使って磁場を発生させ、脳神経細胞に一定のリズムで微弱な電流を誘発し、神経細胞の興奮を起こす非侵襲的な治療になります。

電気信号で刺激をすることで脳の調子を整える役割があります。パーキンソン病や認知症、うつ病などにも効果があるとされています。⑶

井上雄吉,半側空間無視に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果と局所脳血流量(rCBF)の変化について.Jpn J Rehabil Med 2007 ; 44 : 542.553

⒊プリズム適応療法

視野を偏倚させるプリズム眼鏡を使用し、物体を触りにいく訓練を繰り返し実施することで視野の修正を行なっていきます。

初めは眼鏡によってズレた位置に手を伸ばしますが、繰り返し実施することで無視側に視野を偏倚させていきます。

⒋無視側への注意を向ける訓練

無視している側へ注意を向けていく訓練を行います。

視覚探索訓練では無視側へ自然と注意が向くような風景画や、ゲーム形式での視覚探索を行う訓練など様々な訓練が存在します。

自宅でもできること

ここまでリハビリの方法をいくつかご紹介してきましたが、自宅ではなかなか難しい訓練が多いかと思います。
簡単にできる訓練方法をお伝えしますので、ぜひ挑戦してみてください。

無視側へ注意を向ける訓練

無視側へ注意を向ける訓練は比較的自宅でも行いやすいです。
声をかける方向を無視側からするようにするだけでも、注意を向ける訓練になります。

また、読書ができる場合は読書をしたり、音読するようにするとしっかりと隅々まで読めているのか確認ができます。
手を使うことで無視する回数も減少するとの報告もありますので、ネットなどで計算問題や文字消し課題などのプリントを印刷して実際に手を動かしながら注意する範囲を拡大していくことも大切です。

文字消し課題プリント(https://noikiiki.info無料プリント教材より)

身なりを整えることができない方に関しては、無視している側の手や足を実際に見ながら触ってもらったりすることで、自分の身体の認識もできますので、自宅での訓練もぜひ行なってみてください。

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この記事を書いた人

松浦 一将 理学療法士

JBITA公認 成人片麻痺基礎講習前講習1、2修了

大学卒業後、回復期リハビリ病院へ入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。同病院で訪問リハビリも経験させて頂き、より患者様の「生活」に近い場所でリハビリに携わってきました。2022年ハート脳梗塞リハビリ・ラボへ入職。「麻痺をよくしたい」という方はもちろん、前職の経験も活かし、目標に向けた最適な自主トレや運動方法のご提案、情報提供も行っています。 皆様の何気ない「笑顔」を大切に、目標を達成して共に成長できるよう全力でサポートさせて頂きます。