片麻痺の方のダイエットについて

2022.11.25

みなさん、こんにちは。理学療法士の杉山です。

本日は一般的なダイエット知識片麻痺の方向けの方法の例を説明させていただきます。

脳梗塞になる原因の一つに「肥満」がございますが、

今回は肥満が脳梗塞に繋がるメカニズムについてのお話ではないので、

メカニズムを知りたい方は日本肥満症予防協会のコラムをご覧ください。

出典:一般社団法人日本肥満症予防協会「肥満予防コラム 5.肥満と脳梗塞」

それでは、どうぞ!

目次

  1. 片麻痺になると痩せにくい?
  2. 片麻痺の方向けのダイエット方法

片麻痺になると痩せにくい?

体重増加のメカニズム

まず、簡単に体重はどうして増えるのかを説明していきます。一般的に、

摂取エネルギー消費エネルギー

になると脂肪量が増えていく(脂肪細胞が太る)と言われています。

摂取エネルギー:食事量、食事の内容

消費エネルギー:運動量、基礎代謝

と認識しておくとこの先の内容が分かりやすくなります。

食べ方による違い

ただ、同じ量の食事を摂取し、同じ量の運動をしても太る人と太らない人がいます。

この違いは何なのでしょうか。実は、大きく分けて2つあります。

一つは、体質の違いです。

※手首を使って簡単にわかる体質チェックなどもありますよ。

そして、もう一つは食べ方の違いです。

次のような食べ方をしていると太りやすいと言われています。

・食事の回数が少ない

・朝食を抜いて、夜にまとめ食をする

・噛む回数が少なく、早食いをする

肥満の基準は?

日本肥満学会はBMI25以上を肥満と定義しています。

BMIとは、体格指数のことを言い以下の方法で計算することができます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

で算出することができます。なので、例えば、身長が170cm、体重が60kgの人であれば

BMI=60÷1.7÷1.7=20.8

となります。

自分のBMIをご存知でない方は一度計算してみましょう。

出典:一般社団法人日本肥満学会「肥満と肥満症」

BMI=25以上であると肥満になるの?

ただ、一概にBMIが25以上であると肥満とは言えません。対象外になる方は、筋肉量が多い方です。

あくまで、BMIは体重で計算しています。なので、同じ60kgの人でも、筋肉量の多い人と、脂肪量の多い人では異なるわけです。

そこで、リハビリラボではInBodyという機器を使用し、筋肉量の数値も出しています。

そうすることで、肥満なのか、筋肉質なのか、より詳細にデータを取ることができるのです。

例)杉山のデータです

片麻痺になると太りやすい?

では、以上のことから片麻痺の方は太りやすいのかどうか。

結論から言うと、片麻痺の方は太りやすくなります。

特に手足より体幹の脂肪量が増えると言われています。※

なぜなら、摂取エネルギーに関して、多くの方は病院に入院時と比べると

好きなものが食べられるようになります。そうすることで、摂取エネルギーが増え、

退院後に体重が増加する方が多い印象です(個人差はあると思いますが。)

さらに、片麻痺による動きにくさや退院後の慣れない環境により運動量が減ってしまうことで

消費エネルギーも減少してしまいます。

これらが積み重なることで、健康な方より片麻痺の方は太りやすいリスクと隣り合わせになるのです。

※出典:Segmental body composition transitions in stroke patients: Trunks are different from extremities and strokes are as important as hemiparesis

片麻痺の方向けのダイエット方法

片麻痺の方にとって痩せることのメリットは?

一般的に一度、脳血管障害を患うと再発するリスクが高まると言われています。特に、脳梗塞では

発症後1年:10%

   5年:35%

   10年:50%

という再発率となっています。

加えて、前述したように肥満の方は脳梗塞片麻痺になりやすいと言われていますので、

再発率がさらに高まってしまいます。

そのため、再発を防ぐために体重を減らすことはとても重要になります。

また、理学療法士の観点からは、体重が減ることで

・疲れにくくなる

・重心の位置が高くなる

・運動効率が良くなる

など、メリットがたくさん考えられます。

片麻痺の方はどうしたら体重は減少するのか?

では、痩せるためにはどうしたらいいのかと言いますと、

摂取エネルギー消費エネルギー

になればいいのです。つまり、

摂取エネルギーである「食事の量を減らす」もしくは

消費エネルギーである「運動の量を増やす」ことで痩せることは可能です。

しかし、健康的に痩せていくためにはいくつか注意することも必要です。

それは極端に行わないこと。例えば、

・朝食や夕食を抜く

・炭水化物を摂取しない

・ある一定のもの(野菜など)だけを食べる

などは一時的な効果は得られても持続しない もしくは 健康状態が不良になる可能性が考えられます。

片麻痺の方がダイエットをする前に大切なこと

まずは、目標体重を決めましょう。

目標を設定することでモチベーションにつながります。

ただし、極端な数字はおすすめしません。目安は、BMIの数値を22程度で設定してみましょう。例えば、身長が158cmの方は

1.58×1.58×22=54.9kg

となりますので、158cm,60kgの場合は-5.1kgのダイエットを頑張りましょう。

一般的なダイエット方法とは?

ダイエットをする上で最も大切な2つが食事運動です。

一般的に、体重を1kg減らすためには約7000kcalを消費する必要があると言われています。

そのためには摂取エネルギーを調整(食事)し、消費エネルギー(運動)を増やすことが重要になります。

では、どのようなことを気をつけていけばいいのか説明していきます。

食事に関して

食事の間隔を意識する

実は、最適な食事の間隔は4〜5時間です。

間隔が短いと前に食べたものが消化されていない状態で、さらに新たな食物が体に入ることになります。消化吸収するのに胃や腸に負担がかかり、健康に問題が出てくる可能性があります。

間隔が長いと空腹により低血糖になります。すると脳は危険を察知して、次に食べたものの糖分や脂質をできるだけ取り込もうとします。その結果、体脂肪が増えてしまうのです。また、空腹状態が続くと筋肉を分解してエネルギーを使おうとするため、筋肉量が減少し新陳代謝が悪くなって太りやすくなります。

これらを踏まえて、食事の間隔は4〜5時間が最適です。

食べる順番を意識する

食べる順番を意識し、血糖値の上昇するスピードを緩やかにすることが体脂肪の蓄積を防ぐこともわかってきています。

野菜類肉や魚などのおかずごはんのような順で食べると血糖値の上昇を緩やかにすることが期待できます(コース料理の順番ですね)。ただし、野菜と言っても、じゃがいもやにんじん、とうもろこしは糖質を多く含むので摂り過ぎには注意してください。

さらに、食物繊維の多いものを先に食べることも血糖値の上昇を緩やかにすることが期待できるため、野菜の他に、きのこ海藻類なども先に食べることがおすすめです。

食べるものを意識する

さて、P F Cバランスというものをご存知でしょうか。

P:protein(タンパク質)

F:fat(脂質)

C:carbohydrate(炭水化物)

の頭文字をとったものです。

食事をするときには「野菜のみ摂取する」「炭水化物を摂取しない」

など極端なことを行うとリバウンドをしやすかったり、健康面に問題を来したりする可能性があります。

そこで、P•F•Cのバランスを考えながら食事を取ることをお勧めします。

PFCはそれぞれ、1gあたりのカロリーの量が異なります。

P:1g=4kcal

F:1g=9kcal

C:1g=4kcal

となっています。つまり、脂質は少しの量でもたくさんのエネルギーに変わる栄養素です。一方で、摂取すると脂肪として体に蓄積されるため、取りすぎないように注意しましょう。

バランスの配分としては、

タンパク質:13~20%

脂質:20~30%

炭水化物:50~65%

を目安にするといいですね。

糖質・脂質を制限することで摂取カロリーを減らすことができますが、こちらも極端なカロリー制限を行うことは控えましょう。

つまり、大切なことは「バランス」です。バランスの良い食事を順序よく食べましょう。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」

運動に関して

ダイエットに必要なもう一つのことが、運動です。

有酸素運動と無酸素運動をご存知でしょうか。

有酸素運動

一般的には、散歩や水泳、サイクリングなどの有酸素運動を行うことが推奨されています。

有酸素運動とは、酸素を使って脂肪を燃焼させる運動のことです。負荷量は軽度〜中等度を意識してください。息が切れるほどの運動ではありません。

まずは、毎日継続して行うことを優先しましょう。そのため、最低限の負荷量から始めてみてください。

10分以上行うことで効果が期待できると言われています。最初は毎日10分から始め、徐々に時間を伸ばし30分、1時間を目指していきましょう。

さらに、効果を出すためにお勧めすることは、無酸素運動も取り入れることです。

無酸素運動

無酸素運動とは、短時間で高負荷のかかる筋トレのような運動です。酸素を使わずに、筋肉に溜め込まれたエネルギーを源として行います。無酸素運動は脂肪燃焼効果は高くないですが、筋肉量を増やしたり基礎代謝を向上させたりします。

基礎代謝を向上させることで、カロリーが消費しやすくなるため、無酸素運動をお勧めします。

順番としては、無酸素運動→有酸素運動で進めることが効果的です。

基礎代謝基準値というものもありますので参考にしてみてください。

出典:厚生労働省「e-ヘルスネット 加齢とエネルギー代謝」

片麻痺の方はどうするか?

さて、それでは片麻痺の方はどうするか。

片麻痺の方の食事

まず、食事に関しては、上述した内容を意識してみましょう。片麻痺の方は、健常な方々より活動量が減り、消費エネルギーを捻出しにくい状態です。そのため摂取エネルギーを摂りすぎてしまうと、簡単に体重が増加します。なので、間食を控え、食事バランス・順番を意識してみましょう。

片麻痺の方の運動

そして、運動に関しては、有酸素運動を取り入れている方は大勢いらっしゃいます。

散歩をすることは非常に有効ですので、既に行っている人は継続していきましょう。まだ、行っていない人は10分から始めてみましょう。

一方で、片麻痺の方で無酸素運動を取り入れている方は少ない印象です。

積極的に無酸素運動を取り入れましょう。そうすることで、筋肉量が増加し基礎代謝が向上します。

では、どこの筋肉を鍛えると効果的か。それは、大きな筋肉を鍛えることです。

特に、片麻痺の方では、お尻の大きな筋肉である大臀筋が弱くなっている方が大勢いらっしゃいます。

片麻痺の方で大臀筋が弱くなると、歩行速度が低下し、姿勢が崩れバランス能力も低下します。

それらも踏まえて、片麻痺の方は

大臀筋を鍛えていくことで、「歩行能力の向上」と「体重減少」につながるという一石二鳥以上の効果を期待できます。

片麻痺の方の自主トレ

大臀筋を鍛える自主トレ方法は、スクワットがお勧めです。

転ばない環境で10回行うと疲れる程度まで腰を落として行ってみてください。

これを1日3セットから始めてみましょう。

注意点は麻痺側の足にしっかりと体重を乗せることです。

その他、自分に合った運動を行いたい方は療法士の先生に聞く

もしくはリハビリラボまでお越しください!

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