夏場の脳卒中で気を付けなければいけない事

2023.05.26

5月ですが暑い日がつづいています。もう30℃を越えたところもあります。

気温が高い日である夏と脳梗塞は大きく関係しています。なぜでしょう。この記事を読めばその答えがわかり、夏に気を付けなければいけない事が理解できます。

はじめに

以前、脳卒中と季節、気温に関する関係をお伝えしました。※以前のブログ内容はこちら

その中で、脳梗塞は夏場に多いことを伝えました。原因としては、発汗によって血液内の水分が失われることにより、血液がドロドロになって、血管で詰まりやすくなるためです。脳梗塞は夏に起こりやすく、脳出血、クモ膜下出血は冬に起こりやすい。というのが、脳血管障害の定説です。これから夏にかけて気温の上昇がみられます。脳卒中予防にはどんなことに気を付けたらよいのでしょうか?

危険なのは気温差

気温と脳卒中にはどんな関係があるのでしょうか?

そこで、2017年に広島大学が、約4000人の脳卒中患者について調べた有名な研究結果があります。前日と気温変化の無い日を比較して、前日に比べて気温が下がると1.2倍、逆に気温が上がっても1.2倍脳卒中発症のリスクが高まることがわかりました。(気温差は湿度で補正されて数値を使用しています)脳卒中リスクのある方は、前日と気温差がある日は気を付けるべきと注意を呼び掛けています。

1日の寒暖差にも注意

北海道では脳卒中に季節指数はなかった?

一日ごとの気温差の大きさが脳卒中に影響を与えていることはお伝えしました。更に、日中の気温差(寒暖差)も脳卒中に影響する事がわかっています。冬場に脳出血が多いのは定説です。温かい場所から急に寒い場所に移動することで心臓や血管に負担がかかることをヒートショックといいます。これが脳卒中を起こしやすい原因となります。しかし、地域別に見た時に興味深いデータがあります。それは、東北地方では冬場に脳出血が多いが、北海道では季節差が無いということです。このヒントは冬の北海道の寒冷対策にあります。北海道の住宅は生活スペース以外の場所も暖房を使用しています。廊下や脱衣所、トイレなども温めています。冬でも室内の気温差が少ない状態を作っています。こうした寒暖差の無い状態は、脳卒中予防に効果があるのです。

日中の気温差が10度以上ある日は注意を

今度は夏場に話を戻します。季節の変わり目もそうですが、夏場のクーラーの効いた部屋から暑い場所への移動など、10度以上の温度差を一日で感じる場面は多くなってきています。

こういった場面は心臓や血管に大きな負担をかけます。脳卒中リスクのある方は血管が弱っていることが多く、温度差曝露で血圧の上下が激しくなると、弱った血管が更に刺激されて破れる危険性があります。また、エネルギー消費による自律神経の乱れも注意が必要です。

2003年の夏!今年は暑くなるのか?

そうなってくると気になるのが今年の夏の気温です。

今年の夏はエルニーニョ現象が発生するため、例年より冷夏と予想されていました。

ただ、夏に近づくにつれて暖候期予報では、エルニーニョがあっても「気温は例年より高くなる」と予想されています。そうです。現時点でもそうですが今年も暑いのです。地球温暖化の影響は気象の予想を大きく変えてきます。

脳卒中予防のために夏、気を付ける事

①熱中症対策

熱中症対策はそのまま脳卒中対策になります。

外の温度が高くなると、人は体温が上がらないように汗をかいて調節します。病気や高齢、運動不足によって体温調節能力が低下していると、発汗がうまくいかなくなります。すると体温の上昇を抑える事が出来ず、熱中症になってしまいます。心臓や血管に負担をかけてしまうため、脳卒中にはよくありません。

熱中症予防に関しては厚生労働省のHPで詳しくでていますのでこちらを参考にしてください。※熱中症予防はこちら

②こまめな水分補給

体から大量の汗をかくと、浸透圧の関係で、血液の水分も失われてしまいます。その結果、血液がドロドロになってしまいます。こまめな水分摂取は、血液の水分量を保ち、血液量を維持するのに大切です。

夏場の発汗によって水分を摂取する際は、スポーツドリンクのような、砂糖塩分が入っているものが推奨されています。運動によって体を動かして大量発汗した際はあてはまりますが、安静時の発汗を補う際は水で十分です。日本人は食事による塩分摂取が十分にされていますので、プラスで補うと塩分過多になる可能性があります。よって運動をしていない場合の水分摂取は水で十分です。

③アルコール摂取を抑える(大量飲酒をしない)

夏場は、自然とアルコール摂取量が増えてしまうシーズンです。

適量のアルコール(ビール500ml1缶、お酒1合)は血液循環をよくし、善玉コレステロール(HDL)を増やしてくれます。気を付けなければいけないのは過度な大量飲酒です。

私自身、脳卒中の治療に従事していますが、肌感として、中年以降の男性患者さんの多くが、病気以前にたくさんのアルコールを摂取しています。大量の飲酒は脳卒中のリスクファクターではありますが、改めて関連性が強いと実感しています。また、アルコールには利尿作用があるため、水分摂取には全く効果がありません。

④適度な運動を行う(暑熱順化をする)

適度な運動は、血圧や中性脂肪、コレステロールなどの数値を下げるために重要です。運動習慣を身に着ける事はとても大事なことです。更に付け加えると、夏に負けない体づくりという観点から、徐々に暑さに慣れていって体温調節能力を向上させることも必要です。これを専門用語で暑熱順化と呼んでいます。まだ夏になっていない今の時期から日中外に出て、日に当たりながら運動を行います。適度な有酸素運動が良いので、20分程度のウォーキングで大丈夫です。これは熱中症対策にもなります。夏場に入ってしまっていれば、朝早い時間を利用してウォーキングを行います。少しでも涼しい時間帯であり、かつ、日が当たる環境がベストです。

さいごに

この記事では

①夏はなぜ脳卒中になりやすいのか?

②寒暖差に気を付ける理由

③夏の脳卒中予防について

をお伝えしました。役に立つ内容でしたら幸いです。

この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。