「脳梗塞後遺症の回復」について調べてみると「6ヶ月で頭打ち(6ヶ月の壁)」という情報が出ています。
それを聞くと不安になりませんか?
本記事では、脳梗塞専門のリハビリ施設で働いている理学療法士が「6ヶ月の壁」の真実について解説しています。
この記事を読むことで、脳梗塞発症後6ヶ月を経過していたとしても回復する見込み・可能性があることがわかります。
6ヶ月の壁とは
脳卒中の当事者の方やご家族、その方の担当となったリハビリの療法士など、様々な方が気になる回復の見込み(=予後)。
脳卒中の予後を調べていると、辿り着く言葉が「6ヶ月の壁」ではないでしょうか。
一般的に脳卒中は、病気が発症してから6ヶ月を過ぎると、脳自体が回復しなくなり症状や機能も一定になると言われています。つまり、発症してから6ヶ月を過ぎると手足の麻痺はそれ以上回復しないということです。
これを「6ヶ月の壁」と表し、多くの当事者、ご家族、療法士などを悩ませています。
6ヶ月の壁という言葉が広まった経緯
実は、厚生労働省は脳卒中の回復に関して以下のように発表しています。
【引用】
脳卒中の発症後、手足の麻痺や言語の障害などが残る場合がある。運動機能等の低下が認められた場合には医療機関等においてリハビリテーションが実施されるが、一般的に運動機能はおよそ発症から 3~6 か月までに顕著に回復し、それ以降はあまり変化が見られなくなる。ただし、言語機能などは 1 年を経過して徐々に改善する傾向がある。結果的に残存した機能低下を「障害」という。
厚生労働省 「脳卒中に関する留意事項」
また、N H Kで特集された「脳がよみがえる~川平法(かわひらほう)~」の中でも6ヶ月の壁に関して取り上げられています。
このように、国の発表やメディアの発信により世間に広まったのではないでしょうか。
6ヶ月の「壁」って何の壁?
脳卒中を発症した場合、ほとんどの方は急性期病院→回復期病院の2つの病院で入院を経験し、回復期病院でリハビリを集中的に行います。
リハビリ病院(回復期病院)の特徴は以下の3つです。
・1日3時間のリハビリを行う
・365日休むことなくリハビリを行える
・最大6ヶ月の入院が可能
一方で、退院をしてから受けられる保険を使ったリハビリは
①外来リハビリ(病院)/②通所リハビリ(デイサービスやデイケア)/③訪問リハビリ
の3つですが、共通した特徴として
・リハビリ時間:20分~40分程度(稀に1時間)
・リハビリの頻度:週に2,3回
が挙げられます。回復をするためにはリハビリを行うことが必要であるにもかかわらず、6ヶ月を過ぎると保険内ではリハビリを行える量が入院時と比べガクッと少なくなってしまいます。
つまり、「リハビリを受ける時間と頻度に制限がかかる」という壁が現れるのです。
6ヶ月の壁の真実とは?
先ほど紹介しましたN H Kの放送「脳がよみがえる」が今から10年以上前のものになり、この頃は「保険外リハビリ」というものは存在していなかったと思います。つまり、退院後のリハビリは時間に制限のあるサービスしか受けることができず、退院後もしっかりしたリハビリを実施した場合、回復するかどうかのデータがありませんでした。
以上のことをまとめると、6ヶ月の壁という言葉・内容が広まった時代は
・退院後は時間制限のある保険内リハビリしか選択肢がなかった
・そのため、退院後に量(リハビリ時間)と質(治療技術)を伴ったリハビリを実施した内容の研究データがなかった
・つまり、6ヶ月経過後も量と質を伴ったリハビリを続けると回復するかどうかはわからなかった
ということになると考えます。
ここから言えることは、「6ヶ月の壁」というものは、実はデータ不足からくる言葉・内容であり、決して「回復は6ヶ月で頭打ち」ということではないのです。
高齢者でも脳梗塞の回復見込みはあるのか?
脳梗塞の後遺症が回復するための大きな要素として「年齢」が挙げられます。
一般的には年齢が若ければ若いほど、後遺症は回復する見込みがあると言われています。
では、高齢者の方々は脳梗塞を発症すると後遺症の回復は見込めないのでしょうか?
安心してください。決してそのようなことはございません。もちろん若い人に比べると回復は緩やかにはなりますが、高齢者の方も少しずつできることが増えていきます。
ただし、高齢者の方々は基礎体力が低下し、疲れやすい方が多くいらっしゃいます。
そのため、若い年代の方と比べると休憩がたくさん必要になり、リハビリの「量」を確保することが困難です。
そこで重要なのが、リハビリの「質」。リハビリの効果をより発揮するための治療内容と技術で足りない量を補う必要があります。
リハビリの内容にこだわっている療法士と二人三脚で歩むことが回復への近道です。
しかし、前述したとおり数年前まではそのようなリハビリ施設はありませんでした。そこで立ち上がったのが「保険外リハビリ」という役割です。
保険外リハビリの役割
国の制度上、デイサービスや外来・訪問リハビリではどうしても時間も頻度も足りず、また療法士の技術は人それぞれであり、それでは麻痺の回復が見込みにくくなります。
一方、保険外リハビリではつきっきりで1人1人に合わせてこだわったリハビリ内容を提供し、本人が満足するまで続けることができます。
また、その他の特徴としてデイサービスや外来リハビリでは「生活の維持・改善」に着目することが多いですが、保険外のリハビリ施設は「麻痺の回復」に着目しています。
つまり、6ヶ月の壁という言葉・内容に立ち向かうためのリハビリを実施しているのです。
ハート脳梗塞リハビリ・ラボの実績
そうは言っても、発症から6ヶ月以降でも回復したというデータがないと疑心暗鬼になるのではないでしょうか。そこで、ハート脳梗塞リハビリラボの実績のご紹介をさせていただきます。
現在(2023年2月)、当施設をご利用になられた方々の約63%の方は発症から1年以上経過しており、今も諦めずにリハビリを実施しています。
当施設では、病院などの保険内では経験することができない鍼治療と病院と同等、それ以上の内容のリハビリを提供し、多くの方に変化を実感していただいています。
詳しくはこちらのページをご覧ください↓
発症から1年以上経過した方の紹介
発症から1年以上経過した方の実例を紹介します。
年齢・性別:50代・男性
病名:脳幹梗塞
目標:一人で外出したい
悩み:歩くときにふらついてしまい、一人で歩くことが難しい
来院当初は、立っている時に動揺が強く、その場で立ち止まることもできませんでした。歩くときは右に大きく傾き、杖に体重を過剰に乗せてしまうことで、不安定さを招いておりました。「左足がどこにあるのか」、「床の硬さや材質」を感じ取りにくく、常に左足が宙に浮いている感覚だったそうです。
そのため、リハビリでは以下の2つに注力して進めました。
・お手玉やボールなどを使い左足へ感覚を入力し続け、自分の足を認識できるようにする
・寝返りや起き上がり動作で体幹の強化を行いバランス機能を高める
同時に進めていくことで、足を肩幅程度で開いた状態で立つことができ、歩くときは右への傾きが減りました。
その後は、自動車免許の更新もできたり、復職に向けた活動も行なったり、外出頻度が増加しています。
Youtubeでも紹介していますので、ぜひご覧ください。
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この記事を書いた人
杉山 一輝理学療法士
JBITA公認 成人片麻痺基礎講習会修了/川平法 入門編講習会修了
大学卒業後 リハビリ専門病院に入職。主に脳梗塞・脳出血の患者様のリハビリを担当。経験年数で評価されやすい業種だからこそ、新人時代から技術の質と学ぶ密度にこだわってきました。院内で積極的に勉強会を開き先輩・後輩関係なく、学んだ技術・知識を伝達しました。2021年 ハート脳梗塞リハビリ・ラボに入職。「リハビリ難民」の方々、特に「麻痺を良くしたい」「今のリハビリでは物足りない」と思っている方々に満足いただけるサービスを提供できるように全力を尽くします。