脳梗塞になったら車の運転はいつからできるのか

2023.12.13

 脳梗塞、脳出血の退院後、社会復帰の一つとして希望されるのが車の運転です。自分で車が運転できるかできないかは、自身の行動範囲に大きく影響を与えます。

 後遺症で、運動障害、感覚障害、高次脳障害などいろいろなハンデを負ってしまった場合、車運転再開は可能なのでしょうか?今回の記事は車運転再開までの流れをお伝えします。最後にラボに運転目的で通院されていた方の例を紹介しますので、興味ある方は最後までお付き合いください。

運転再開に必要なもの

 脳梗塞、脳出血に限らず、体に麻痺が残るような大きな病気になってしまった場合、それを申告する義務があります。運転免許の更新には、「病気の症状等申告欄」があります。正確な健康状態を申請してください。これを怠ってしまうと罰則の対象となります。その際必要となるのが

① 医師の許可

② 公安委員会(運転免許試験場)の許可

①②こちらの手続きは必須となります。

運転再開への流れ

① まず、お体の状態を一番把握しているかかりつけ医に、運転の再開をしてもよいか確認をとります。口頭でも問題のないような軽い症状であれば、このまま運転免許試験場に連絡します。不安のある方はこの時点で診断書を記載してもらってもかまいません。診断書が必要かどうかは運転免許試験場で確認してください。

② お住いの都道府県の公安委員会(運転免許試験場)に連絡します。試験場には「運転適性相談室」という窓口があります。体の状態に変化があったという旨を告げると、次のステップに案内してくれます。その際「医師の診断書」が必要となる場合があります。その際は、警察署、または運転試験場で専門の用紙をもらい、医師に診断書を書いてもらいます。

公安提出用診断書 例

 運転試験場では、発症後の運動能力等を確認する臨時適性検査をうけます。その結果、検査に合格すれば、運転再開の許可が下ります。医師の許可が下りていても、試験場の検査に合格できなければ路上での運転はできません。

医師の許可が下りなかった場合

自分では問題ないと思っていても、医師から許可が下りない場合があります。特に高次脳障害を抱えている方は、どんなに症状が小さくても、本人があまり自覚していなくても、非常に厳しい結果となってしまいます。また、専門医ではないため、主治医では判断できない場合もあります。

それでも運転再開に希望を持ちたい場合、運転支援を行っている、運転シュミレーター付きのリハビリ病院に相談しましょう。病気によって、運転に不安のある方もご利用可能です。

愛知県で該当する病院さんは

藤田医科大学病院

名古屋市総合リハビリテーションセンター

などがあてはまります。

 そこでは、運転再開に不安を抱えている方のために、運転シュミレーターを利用した、自動車運転評価を行ってくれます。<通院にはかかりつけ医の紹介状が必要な場合があります>その評価をもとにして、診断書を作成してもらいます。適正であるとされた場合、その診断書をもとに最終的な判断を運転試験場にお願いします。

運転再開に向けての自費リハビリ

 ラボも運転再開に向けたリハビリを行っています。まず、どの身体的部分、機能的部分に問題があって運転が難しいのか評価をし、そこを補うようなリハビリメニューを組み立てて練習を行います。

ケース① 麻痺側上肢全体に痛みがあり、肩手だけの運転が不安 70代男性

 脳梗塞発症から退院後、社会復帰を目指して通院されました。通勤には車が必要ですが、麻痺側の運動麻痺と疼痛のため、運転への不安がありました。ラボでは4か月リハビリを行い、徐々に回復。ついに医師の許可が下りる事となりました。仕事復帰と同時に運転再開を果たしました。

上肢の訓練

ケース② 後遺症の合併でうつ病を併発 40代男性

 脳梗塞の後遺症で半身麻痺となり、その状態への不安からうつ症状を併発してしまいました。そんな中、運動療法と鍼治療を行い、麻痺の改善と、うつの改善を目指しました。

2か月を経過した辺りから徐々に回復傾向に、言動も前向きになり、職場復帰へ意欲的になってきました。その後、運転支援サービスを併用しながら、無事運転再開を果たしました。

歩行による脳の覚醒

ケース③ 一部小さな視野欠損がある 50代男性

 高次脳機能障害がある場合の運転再開は非常に厳しい状況になっています。その中の一つで、「明らかな視野欠損がある場合」は完全な対象外になってしまいます。しかし、どうしてもあきらめきれないというのが利用者様の想いです。その想いを形にするのも自費リハビリです。とても小さな視野欠損であったため、残存の機能を高める事ですべてを補うという、少しの望みにかけてみました。動体視力、ビジョン、反射トレーニングを行い、能力を高めます。2か月間悔いのないように練習をしました。残念ながら運転再開とはなりませんでした。しかし、日常生活における注意力が増加し、視野が広がったため生活はしやすくなったようです。

ビジョントレーニング

最後に

脳梗塞後の運転再開について、ラボの事例を含めて紹介しました。

後遺症に悩みながらも、運転希望をされているかたは沢山いらっしゃいます。 まずは、かかりつけ医に相談してみてください。ご質問がございましたらいつでも連絡お待ちしています。

※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
ご予約はお早めに!

この記事を書いた人

矢澤 大輔 鍼灸師

修士号(医科学)取得

業界歴15年。入社以来主に鍼灸接骨院に勤務し、様々な痛みと向き合ってきました。リハビリラボでは開設以来鍼施術を担当しています。痛み、痙縮、痺れ、麻痺などいろいろな悩みに対して、鍼と手技でアプローチしていきます。体だけでなく、心の支えにもなれるよう関わらせていただきます。