皆さん、こんにちは。理学療法士の杉山です。
早速、本日は
パーキンソン病とは?
パーキンソン病のリハビリは何をしたらいいのか?
について説明していきたいと思います。
当施設は「脳梗塞」を専門にリハビリを提供していますが、実際にはパーキンソン病で悩まれている多くの方にもリハビリを提供しています。
HP内でも簡単にまとめていますので、ご覧ください。
それでは、どうぞ!
目次
- パーキンソン病とは?
- パーキンソン病はどうして起こる?
- ドーパミンの役割とは?
- パーキンソン病の治療方法は?
- パーキンソン病の症状は?
- パーキンソン病はどのように進行する?
- パーキンソン病に対してのリハビリの重要性
- リハビリラボではどんなことをする?
パーキンソン病とは?
パーキンソン病は脳内の神経に異常が生じる変性疾患です。運動障害を始め、認知機能の低下、自律神経障害など様々な症状が現れます。
パーキンソン病の有病率は10万人あたり100~150人程度です。60歳以上では10万人あたり1000人程度とされており、人口の高齢化に伴い患者数は増加傾向にあります(※1,2)。
※1 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」序章
※2 出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」
また、40歳以下で発症する場合は「若年性パーキンソン病」と呼ばれます。進行性の病気で年齢を重ねていくと症状が重症化されると言われています。好発年齢は50~65歳(※3)です。
※3 出典:厚生労働省資料「6 パーキンソン病」
パーキンソン病はどうして起こる?
パーキンソン病ば未だ、原因が判明していない病気です。一方で、他の病気よりも治療技術の開発や研究が積極的に行われています。(※)
現在わかっていることは、パーキンソン病は、脳の「中脳」と呼ばれる場所と「ドーパミン」と呼ばれる物質が深く関わっているということです。
まず、中脳とは視覚や聴覚の大脳との中継所、眼球運動の筋肉の緊張調節を司る場所として知られています。
しかし、実際にはもっと複雑な働きも担っています。例えば、「衝動や欲望を司り、ドーパミンを分泌する場所」。「不随意の運動を司る場所」なども中脳の中に位置しています。
また、先ほど、お話ししたようにパーキンソン病は「ドーパミン」とも深く関わっています。中脳の黒質という場所で作られるドーパミンの量が少なくなることで、パーキンソン病は出現すると言われています。
※ 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」パーキンソン病の診断
ドーパミンの役割とは?
ドーパミンは神経伝達物質の一つです。神経伝達物質とは、脳内のネットワークを繋ぎ合わせてくれる重要な物質です。
その中でも、ドーパミンは、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしています。※1
例えば、アルコールを飲むことによって気分が良く感じることはありませんか?
これは脳内の報酬系と呼ばれる神経系が活性化するためと考えられています。そして、この報酬系ではドーパミンが中心的な役割を果たしています。
また、ドーパミンは「セロトニン」「オキシトシン」と「幸せホルモン」の一つと呼ばれています。
これらの3つの物質により
幸せな気持ちにさせて意欲につながる
集中力がアップして効率が良くなる
ポジティブになる
などの役割もあると言われています。
※幸せホルモンに関しては下のブログに記載しています。
その他にも、ドーパミンは運動調節やホルモン調節など様々な役割を果たす神経伝達物質になります。つまり、ドーパミンが減ることで、ドーパミンの役割が欠如してしまいます。
すると、運動やホルモン(自律神経)の調節が難しくなり、意欲が低下したり、感情が出にくくなるのです。
※1 出典:厚生労働省「e-ヘルスネット:ドパミン」
パーキンソン病の治療方法は?
パーキンソン病の治療方法には、「L-dopa」や「ドパミン受容体阻害薬」などの薬物療法と運動療法(リハビリテーション)の併用が主となります。発症原因がわからないため、根本の治療は難しいと言われています。しかし、進行を遅らせるために薬物と運動の併用療法が効果的であることが判明しています。(※)
また、パーキンソン病になるとすぐに薬物療法を行うというわけではありません。実は、日常生活に問題が出ていない場合は経過観察となる場合もあります。つまり、日常生活に問題がないうちに運動をして基礎体力を上げておくことがとても効果的です。
その他に、外科的治療が実施されることもあります。
※ 出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「パーキンソン病(指定難病6)」治療法
パーキンソン病の症状は?
パーキンソン病の症状は、大きく運動症状と非運動症状に分けることができます。
運動症状
パーキンソン病の運動症状について、パーキンソン病診療ガイドライン2018に基づいて解説します。(※1)
運動症状は無動(運動緩慢)を主症状として、静止時振戦(安静時振戦)、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害(姿勢反射障害)の4大症状が主となります。
無動
パーキンソン病患者は運動の開始が遅れ、運動自体が少なくなり、動作が遅くなります。このように運動の減少のことを無動と呼び、運動の開始や遅れを運動緩慢と呼びます。
無動は患者のADLに最も影響するといわれ、以下のような症状が出現します。
上肢巧緻運動障害:書字の拙劣さ、小字症、箸の使いにくさ など
歩行障害:腕振りの減少、足の引きずり など
ADL障害:寝返り、着替え など
顔面の障害:仮面様顔貌(表情の変化の減少)、小声、瞬目減少、流涎 など
振戦
規則的な震えのことを「振戦」と呼びます。振戦を初期症状として発症したパーキンソン病患者は69%.全経過中に75%の方に振戦が出現していると言われています。
振戦は手指以外にも頸部、顔面、下肢にもみられることがあります。
筋強剛
筋強剛は患者の関節を他動的に動かした際に、抵抗が増強している状態のことを言います。ご家族様が曲げた腕を伸ばす方向に引っ張ってみて抵抗を感じるか試してみましょう。一定の抵抗ではなく、「カッカッカッ」のように断続的な抵抗の場合もあります。
姿勢保持障害
姿勢保持障害は、初期段階ではみられず、症状が進行していくとみられる障害になります。
安定して立つことが難しくなり一度バランスを崩してしまうと、立ち直ることができず、簡単に転倒してしまいます。
その他
・姿勢異常
立位や歩行時に体幹が前屈位になり頸部が伸展し顎を突き出した姿勢を取りやすくなります。特に胸椎下部や腰椎で強く前屈する方が多いです。イメージとしては、強い猫背のような姿勢です。
・加速現象、すくみ足
突進現象とも呼ばれます。徐々に歩行速度が速くなり、自分で止まれずに前方に転倒してしまうことを言います。また、歩行の歩き始めや途中で足が動かなくなるすくみ足がみられることもあります。
※1 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」第3章
パーキンソン病の運動症状に対する薬物治療
パーキンソン病に対しての薬物治療では、開始早期は運動症状が改善することが多いと言われています。しかし、振戦やすくみ足は治療の効果が現れにくいと言われています。また、治療開始後5年で約50%程度の頻度で運動合併症を生じると言われています。
オン・オフ
1日のうちで薬の効果が効いている時間と効いていない時間を繰り返します。
ジスキネジア
薬の効果が効いている時に出現します。顔面や舌、頸部、四肢、体幹に不随意運動が生じます(痙攣のような動き)。
パーキンソン病の非運動症状
目に見えない症状を非運動症状とし、以下のような症状が現れます。(※1)
1、睡眠障害
日中過眠、突発性難眠、不眠、レム睡眠行動障害、下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)
2、精神・認知・行動障害
気分障害(うつなど)、幻覚・妄想、行動制御障害、認知機能障害
3、自律神経障害
起立性低血圧、排尿障害、消化管運動障害、性機能障害、発汗障害、流涎
4、感覚障害
嗅覚障害、疼痛
5、その他
体重減少、疲労
※1 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病ガイドライン2018」第5章
パーキンソン病はどのように進行する?
パーキンソン病は進行がゆっくりの病気です。進行が早い場合は違う病気の可能性もあるため、病院に相談してみてください。
重度の症状が現れるまでに数年から10年以上かかることもあると言われています。
また、症状の現れ方は片手、片足から始まることが多くいです。図のように一般的に「N型」「Z型」で進行すると言われています。
パーキンソン病に対してのリハビリの重要性
パーキンソン病は進行性で徐々に症状が重症化していく難病です。しかし、量と質を伴ったリハビリを実施することで、重症化の発生する時期を遅らせたり、緩和することが期待されています。
文献では、歩行健康寿命の延長や認知機能面の低下の軽減が証明されています。
リハビリラボではどんなことをする?
まずは、皆様の目標、困っていることを聞かせていただきます。
そして、それに合わせどのような運動が必要か分かりやすく説明させていただきます。
また、前述したように、パーキンソン病を患うと運動症状と非運動症状が出現します。
運動症状に対してはリハビリ
非運動症状に対しては鍼治療
が効果的です。そのため、この2つを掛け合わせて運動機能の改善、症状の遅延を図っていきます。
さらに、リハビリでは、以下を重点的に進めていくことで効果を出しています。(※1)
柔軟性の確保
運動症状の「無動」や「筋強剛」、「姿勢異常」などの影響により体が丸まりやすくなります。つまり、体を伸ばして動いたり、捻るような動きをする機会が減るため、徐々に体が硬くなります。すると、伸ばす・捻るといった動きがさらに行いにくくなる負のループに入ってしまいます。そこで、まずは運動をしながら柔軟性を取り戻すことで動きやすさを実感することができます。
有酸素運動
運動機会が減ることで体力が減っていきます。まずは、体力をつけることで日常生活でも動くことができるように目指します。また、有酸素運動を行うことで運動能力の低下やうつ症状を遅らせることができると言われています。適切な負荷量・姿勢で自転車やウォーキングを行い、体力をつけていきます。
レジスタンストレーニング(抵抗運動)
筋力をつけるためには抵抗運動を行うことが必要です。しかし、抵抗運動は適切な負荷量の元行う必要があるため、専門家と行いましょう。
バランス練習
柔軟性を確保し、体力をつけることでバランス機能も大きく変わります。その状態で一人では行えないバランス練習を実施し、転倒しにくい体つくりを進めていきます。また、姿勢が変化しバランスが良くなることで呼吸も安定しやすくなり様々な良い効果が期待できます。
視覚や聴覚を利用した体の動かし方の学習
すくみ足などの症状が現れている方には、視覚的な助け(床に貼ったテープなど)、聴覚的な助け(メトロノームなど)を用いて運動療法を行っていきます。
※1 出典:一般社団法人日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」第4章
また、パーキンソン病の方々は表情が変化しにくくなります。リハビリラボでは、「楽しくリハビリを行い、かつ効果を出す」をモットーとしています。笑顔が自然と出るようにリハビリを進めていきます。
※大好評につきご予約がお取りできない日もございます。
ご予約はお早めに!