手足が動くためには②

2022.08.08

皆様こんにちは。理学療法士の松浦です。
今日は前回に引き続き、「手足が動くようになるために必要な事」について解説していきます
前回の内容の続きになりますので、軽く前回のおさらいをしておきましょう。

前回のおさらい

  • ⒈ 「筋肉」の要素について解説
  • ⒉ 筋原繊維を強化することで筋肥大が起こる
  • ⒊ 筋肉は動かすことで強化される

でした。筋肉の構造や特徴からわかることでしたね。

ただ、構造や特徴が分かっても実際にどれくらいの負荷量で、どれくらいの量を動かしたら良いか分からない方が多いと思うので、今回は「負荷量」と「運動量」について解説していきます。

前回の内容を忘れてしまった場合や、まだみていない方はこちらから確認してみてくださいね。

今回の内容

  • ⒈ 筋力強化のメカニズム
     ・ 運動神経と運動単位
     ・ 神経的な筋力増強
  • ⒉ 負荷量と運動量
     ・ サボりを解消するには
  • ⒊ まとめ

1.手足を動かすための筋力強化とメカニズム

体幹や手足の筋力増強訓練において運動初期に起きる運動成果は、活動する運動単位の増加と複数の運動単位が協調して働くと言われています。

中枢神経系の働きの変化によるものが多く、まず神経的要因による筋力増強が現れ、4〜6週目以降に筋肥大を伴う筋力増強が期待でき、8週目以降に筋肉内の脂肪や結合組織といった非収縮性組織の減少も得られると言われています。
筋力増強訓練が長い期間続けて行われると、筋肉の増大(肥大)が起こります。(例:力こぶが出てくる)

神経的要因による筋力増強と聞いてパッとしない方が多いかもしれません。
筋肉は脳からの指令を伝達するために神経でつながっています。これを運動神経と言います。

運動神経と運動単位

運動神経は筋肉の中で細かく枝分かれする事で多数の筋繊維を支配しており、この運動神経と支配された筋繊維群を「運動単位」と言います。

多数の運動単位によって一つの筋肉が動かされています。
わかりやすく図で例えるとこのようになります。

脳という社長がいて、そこから運動神経という部長がいる。その部長たちが筋肉という部下のグループをいくつか持っている。
というようになります。もっと細かくみていけば、脳と運動神経の間には脊髄神経などありますが、今回は割愛します。

この部下たちが筋肉モリモリマッチョの場合と、痩せて力が全く出ない場合だと当然筋肉モリモリマッチョの方が仕事の効率も上がりますよね。

神経的な筋力増強

さて、ここから重要なのは神経的要因による筋力増強です。
脳からの信号が来なくなってしまったり、休みの指令が多く出てしまうと部下たちは仕事がないため、だらけてしまいます。
休みの期間が長くなってしまうと、皆さんも学校や仕事に行かずにもっと休んでいたくなりますよね。

これが筋肉にも起こっているのです。

運動前の筋繊維の状態

運動を始めることで脳からの信号が部長たちに知らされ、部下たちも動き出す。しかし、だらけた部下の中にはサボる部下もいます。


脳卒中や高齢者ではこのようにサボっている部下がたくさんいる事で手足が動きにくいことが多いのです。
そんな中でサボらないように手足に指令を出し続けるとしぶしぶ働き出しますね。

運動後の筋繊維の状態

これが神経的要因で筋力増強が現れるということです。
脳卒中や高齢者の方ではこの働いている筋繊維を沢山増やすことが、筋トレの第一歩となります。

また、休憩期間が長かった筋肉は筋繊維が働き始めるまで時間がかかってしまったり、運動を止めると再び休息に入りやすいので、根気良く訓練を続ける事が大切です。

筋繊維に置き換えるとこんな感じ

2.手足を動かすための「負荷量」と「運動量」

さて、筋力強化とメカニズムが理解できたところで、本題の「負荷量」と「運動量」に入っていきます。
よく筋トレの解説には10RMの強度で行うことで筋肉が増強されると言われています。

※RMとは:レペティション・マキシマムの略。「ある重さに対して何回持ち上げることができるのか」の回数。

例:1RM=ある重さに対して1回のみ持ち上げられる。
  10RM=ある重さに対して10回持ち上げられる。

しかし、脳卒中や怪我、高齢者の方には負荷量が強すぎます。
先ほどの章のサボっている部下を働きやすくするためにも「負荷量」と「運動量」は大切です。

サボりを解消するには

例えば、みなさんが部下であった際に上司である脳や運動神経(社長や部長)が1人でできないような仕事やとてつもない量の仕事をお願いされたらどうなるでしょうか。
やる気は中々起きませんよね。中には逆境に立たされた方がやる気が出る!という方もいるかもしれませんが、あくまで例えです。
それに比べて1人で数分でできるような簡単な仕事をお願いされたら引き受けますよね。

そうです。筋肉達も同じで簡単な運動であれば動いてくれて、とてつもない量の運動や難しい運動は中々働いてくれないのです。
特に脳卒中では身体を動かしにくいこともあり、筋肉達は中々働いてくれません。

サボり癖がついてしまった人をサボらないように更生させるのが難しいように、サボり癖のついた筋肉は少しの運動では動いてくれません。
四六時中ずっと動かしてやっとサボり癖が治ってくるため、空いている時間で常にできるような簡単な運動にしましょう。

このように簡単にできて、かつ沢山動かす運動を
「低負荷、高頻度」の運動と言います。
脳卒中や高齢者の方にはこの負荷量がまず大切になってきます。

筋肉たちが長期休暇から復帰したら、「高負荷、低頻度」の運動に切り替えることで更なる筋力増強につながっていきます。

3.まとめ

それでは今回のまとめです。

  • ● 初期に神経的要因による筋力増強が現れる
  • ● 長期休暇していた筋肉には軽い運動を
  • ● 運動としては「低負荷、高頻度」の運動

です。

どの位置に自分がいるかが分かりにくい方や、「全く動かない!」や「緊張が上がりすぎてしまう」という方は
理学療法士や作業療法士の方に聞いてあなたに適した運動を教えてもらいましょう!
リハビリ・ラボでもそのような質問は大歓迎です!
初回お試しコースでもあなたに合った訓練方法や、負荷量をお伝えしています。
ぜひ、皆様も一人で悩まずにお気軽にご相談ください!
それでは、また次回のブログでお会いしましょう!

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